尾竹国一の絵馬を調査する(手前から)加藤学芸員と坂森館長

尾竹国一の絵馬を調査する(手前から)加藤学芸員と坂森館長

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尾竹国一の絵馬を富山市の神社で発見

北日本新聞(2019年9月17日)

 売薬版画を多く手掛けた明治時代の浮世絵師、尾竹国一(おたけくにかず)(1868~1931年)が描いた絵馬が、富山市四方荒屋の神明社で見つかった。保存状態が良く、筆遣いまで分かることから専門家は「国一を研究する上で重要な資料。国一の絵馬は未調査のものが多く、県内各地から見つかる可能性も秘めている」と述べた。

 国一は新潟出身。1890(明治23)年ごろ現富山市に移り住み、約10年にわたり売薬のおまけとして制作された「売薬版画」を数多く手掛けた。弟の竹坡(ちくは)、国観(こっかん)と共に日本画壇で活躍し「尾竹三兄弟」として知られる。

 発見された絵馬は、97(同30)年4月に完成したもので、縦73センチ、横194センチ。日本神話を題材に、天の岩戸に隠れた天照大神を神々が祝詞や舞で招き出す様子が描かれている。

 絵馬はこれまで神明社の拝殿に掛けられていた。6月に神明社の改修工事のため、河西武四方荒屋町内会長らが社内を整理した際に絵馬に記された国一の名前に気付いた。当時の住民53人の名前も書かれており、神明社の完成を祝って住民が国一に制作を依頼したものとみられる。

 「尾竹三兄弟」の研究に取り組む敦賀市立博物館(福井県)の加藤敦子学芸員(富山市出身)は、国一が描いた絵馬の調査を行っており、県内では四方荒屋のものを含めて17点を確認している。浮世絵版画と違い、絵馬は筆遣いなどが観察できるため、作者の実力や制作意図が反映されやすく、研究資料として貴重だという。今回の絵馬に関して、加藤学芸員は「剥落がなく、制作年もはっきりしているので資料価値が高い」と話した。

 昨年、国一の浮世絵展を企画した富山市郷土博物館の坂森幹浩館長によると、国一が手掛けた絵馬などの作品は、空襲や大火の影響を受けた富山市街地に比べて郊外に残っている可能性が高いとしている。

 また、この絵馬は国晴(くにはる)(生没年不詳)との合作であることが分かった。国晴は、国一の弟子筋と知られていたものの、経歴は不明。連名で記されていた絵馬が見つかったことで、今後の研究につながるという。

 河西会長は「絵馬は先人たちの遺産。町の象徴として残していきたい」と話した。 

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