コーヒー豆の入った瓶をカフェまで届け、空の瓶と交換するセツさん(中央)とハナさん(左)

コーヒー豆の入った瓶をカフェまで届け、空の瓶と交換するセツさん(中央)とハナさん(左)

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乗鞍で焙煎、フェアトレードのコーヒー豆 米国から移住の夫妻販売

信濃毎日新聞(2019年10月26日)

 松本市郊外の乗鞍高原で、米国から移り住んだセツ・マカリスターさん(38)と妻のハナ・マカリスターさん(36)が、東南アジアの東ティモールからフェアトレード(公正な価格での取引)で取り寄せたコーヒー豆を自家焙煎(ばいせん)して高原内のカフェなどに瓶詰で販売している。新鮮な風味や環境への配慮が評判を呼び、一帯の個人宅にも配達。2人は「アルプスの雄大な山々に囲まれて暮らす感動の中で、地域の人と人をつなげたい」と話している。

 コーヒー豆は各国の生産者の暮らしを支えるNPO法人「パルシック」(東京)を通じて仕入れている。東ティモールの産地は標高約1500メートルで、乗鞍高原と環境が近いことにも着目。高原の主要産業でもある飲食店や宿泊施設でも提供でき「高原の暮らしでのティータイムにもぴったり」と考えた。

 「地球に優しい形」を目指し、プラスチックごみなどを出さないよう、デポジット(預かり金)方式の瓶詰での配達を採用した。瓶を次の配達の際に回収することで、事業で出るごみは豆のかすと輸入に使う麻袋程度という。

 毎週水曜日に焙煎。ハナさんは「焙煎したての豆は油のにおいもない」と話す。新鮮な風味が保たれるよう、100グラムずつ500円で販売している。

 セツさんは自然豊かなオレゴン州の出身。夫婦それぞれ松本市や岐阜県などの学校で英語教師を務めた経験があり、乗鞍高原を気に入って2008年に移住した。観光業などに携わってきた。

 バブル期以降、人口が減る中で、高原でも生鮮食品店などが閉店。高原内の飲食店主らが首都圏や中京圏から食材を仕入れることもあると知り、「地元で使える物を提供できれば共存、共栄できる」と、コーヒー豆の販売事業を思い付いたという。本格的に事業に乗り出して1年半。現在では高原一帯のカフェ3店や個人宅約40軒に新鮮な豆を届けている。

 乗鞍観光センター内のカフェ「GiFTNORiKURA」のオーナー藤江佑馬さん(36)は豆を購入する1人。「持続可能な地球環境や乗鞍高原を意識した2人の事業に共感している。(自分の)カフェも『乗鞍の恵み』との意味なので、高原内で焙煎したコーヒーを提供するのは必然だった」と話す。

 夫婦は事業名を「ノリクラパイオニアロースターズ」とし、乗鞍高原で新しい道を切り開く―との強い思いも込めた。「市街地から1時間ほどで足を運べる所に自然にあふれた場所があると気付いてほしい」(セツさん)とし、申し込みは高原で豆を引き取れる人に限っている。

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