詩集や遺品など100点近い資料が並ぶ企画展「三国に集った作家たち」=福井県坂井市みくに龍翔館

詩集や遺品など100点近い資料が並ぶ企画展「三国に集った作家たち」=福井県坂井市みくに龍翔館

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三好達治や則武三雄が集った「文学のまち」軌跡追う 坂井市三国の龍翔館で企画展

福井新聞(2019年11月9日)

 戦中戦後の三国の地で交わった作家たちにスポットを当てた企画展が、福井県坂井市みくに龍翔館で開かれている。1944年から5年間、三国に流寓(りゅうぐう)した漂泊の詩人三好達治がその中心にいて、中野重治や則武三雄(かずお)らそうそうたる作家が文学活動を育み、「文学のまち」として花開く軌跡を追っている。12月1日まで。

 「三国に集った作家たち」と銘打ち、詩集や遺品、関連品など100点近い資料を展示している。

 三好(1900~64年)は旧雄島村米ケ脇で5年間過ごし、後に「わが心のふるさと」と口にするほど三国を愛した。三国時代に出した詩集「故郷(ふるさと)の花」「砂の砦(とりで)」や作詞した三国高校歌の草稿(複製)、寓居(ぐうきょ)の写真などを並べている。

 三好を訪ねて三国を訪れたのが、坂井市丸岡町出身のプロレタリア作家中野重治(1902~79年)。東尋坊周辺の景観の変容に対する思いをつづった「土面積、水面積、空面積の件」をはじめ、三国ゆかりの文学作品を収録した書籍「三国近代文学館」を展示している。

 福井県出身者として初めて芥川賞を受賞した福井市生まれの小説家多田裕計(ゆうけい)(1912~80年)も三好と交流した一人。三好と地元の文学青年が立ち上げた「三国地方文化会」では講師を務め、同会の機関誌「三国文化」第1号にエッセーを寄稿した。企画展では三国文化第1~4号を見ることができる。

 師である三好の招きに応じて三国に移住した則武(1909~90年)については、朝鮮で文学活動に励んでいた戦前に師から届いたはがきを展示。則武の作品に対する厳しい批評の言葉が並ぶ。

 三国は北前船の寄港地として繁栄を遂げたが、次第に衰退した。商港から漁港へと変貌した大正時代の後、文学のまちとして花開いた背景について、龍翔館の学芸員は「ひっそりとした古い港町の風情が文学に合うのだろうか」と推察。昭和期の三国湊の写真など、当時の風土がしのばれる資料も用意した。

 三国生まれの小説家高見順(1907~65年)、三国にたびたび足を運んだ俳人高浜虚子(1874~1959年)、三国生まれで則武に師事した現代詩作家荒川洋治さん(70)らも取り上げ、見応えのある内容になっている。
 入館料は大人300円、小中学生150人。水曜休館。

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