南砺市福光のそば店「萱笑(かやしょう)」が、地元の土で焼いた器にそばを盛り、客に出すもてなしを始めた。同市細野(城端)の工房で作陶に励む韓国出身の金京徳(キムキョントク)さん(49)が、料理に合わせて器を作った。長年、地元産のそばにこだわってきた店主の嫁兼弘明さん(51)は「夢がかなった。南砺の魅力を発信できればうれしい」と話している。
嫁兼さんはことし5月、北日本新聞のフリーペーパー「まんまる」を読んで金さんを知り、工房を訪ねた。工房に並ぶ素朴な作品や金さんの情熱的な人柄に引かれ、制作を依頼した。
金さんは南砺で産出された土だけを使った作陶を、約20年間試み、昨年末に成功した。嫁兼さんの希望に添うよう、形や色を工夫した器を試しに提供。美しさだけでなく、重さや使いやすさ、収納のしやすさなどを確かめてもらった。感想を踏まえて改良を重ね、そばの皿やだしの器、てんぷらの角皿を完成させた。
主役のそばが引き立つよう、ヨモギや青磁をイメージした淡い色合い。重厚感を感じさせながらも薄く、使いやすくした。天ぷらの角皿は金さんが好きな小説「老人と海」をヒントに、生命力を感じさせる波のような線を出した。金さんは「食は生活の基本。一口食べるごとに笑顔になってもらえたらいい」と言う。
客の反応は上々という。嫁兼さんは「器もそばも、地元にこんな素晴らしい物があることを知ってもらいたい」と話している。