能美市立病院は24日までに、自力で同病院に出向くのが困難な市民を無料送迎する「ナースカー」を導入した。看護師らが同乗するため、介助が必要な患者でも安心して利用できる。医師や看護師の人手不足が進む中、病院側にとっては訪問治療に比べて人員を割かずに済む利点もある。同病院によると全国でも珍しい取り組みで、地域に根差した医療機関として機能強化を図る。
ナースカーは、救急車を呼ぶほどの緊急性はなくとも、発熱や持病の悪化などで病院に行くための介助が必要な患者が主な利用対象となる。
地域医療連携室にナースカーの窓口を設置。受付時間は平日の午前8時半から午後4時半までで、患者から電話で要請があった場合、担当の看護師が症状を確認し、必要に応じて介護士なども送迎に同伴する。使用する車両は能美市大浜町の介護老人保健施設「はまなすの丘」と共用する3台で、車いす利用者やストレッチャーの乗車にも対応できる。
市立病院では近年、一人暮らしの高齢者を中心に「今すぐ診察を受けたいが、自力では行けない」といった問い合わせが増えていたが、医師と看護師の人手不足により訪問治療への人員が回せない状況が続いていたという。
市立病院は、厚生労働省から「再編・統合を促す必要性のある」公立・公的病院として名指しされた県内7病院の一つ。能美市は来年度にも芳珠記念病院を運営する医療法人社団和楽仁(同市)と、競合による機能重複を防ぐ目的で「地域医療連携推進法人」を県内で初めて設置する方向で検討している。
市立病院の山下順子看護部長は「住民に寄り添ったサービスを展開するのが地域の病院の使命と考えている。これからも幅広く対応していきたい」と話した。