富山市出身の写真家、テラウチマサトさん(65)が、1月2~7日に富山大和で開く個展で、掛け軸に仕立てた立山の写真をお披露目する。県内の表具師と連携し「和のしつらえ」とすることで、県民の古里を思う心に響く展覧会にしたい考えだ。
テラウチさんは東京を拠点に活躍している。ポートレートでは俳優、タレントら6千人以上の著名人を撮影してきた。富山市民らを対象にしたアメイジングトヤマ写真部で講師を務め、2014年に市政策参与に就くなど、近年は富山でも活動の幅を広げている。
富山での個展は4回目。12年にパリで開かれた展覧会で、掛け軸にした富士山の写真が好評だったことから、県民の心のよりどころでもある立山を軸装した。朝日で輝く立山をはじめ、飛行機の窓から見た富山湾と山並みの写真など、軸装15点を含む35点を並べる。
掛け軸は、ガラス作品を軸装するなど新たな試みに取り組む表具店「岩崎精正堂(せいしょうどう)」(南砺市岩屋・井波)の岩崎正克さん(49)が手掛けた。耐久性に優れ、文化財の修復にも用いられている五箇山の悠久紙を用いた。
テラウチさんは父親が転勤族だったことから、5歳で県外に移り、小学4年で富山に戻った。
小学校卒業後に再び引っ越しすることになり、「自分の古里はどこなのか」と思い悩んだときに、学校の窓から見えたのが立山だった。雄大な景色を眺めていると、富山での楽しかった日々が思い出され、「ここを古里にしよう」と決めたという。
こうした経験もあって、富山の人々が寄せる立山への思いには特別なものがあると感じている。うれしいときも悲しいときも、立山を見上げる瞬間があり、心に浮かぶものもさまざまだ。「人それぞれの立山がある。思いを重ね合わせられる写真を飾りたい」と話した。