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会員制ヘリ山岳救助 白馬のNPO 今夏から試行

信濃毎日新聞(2020年1月1日)

 遭難救助や山岳事故防止に取り組む北安曇郡白馬村のNPO法人「ACT(アクト)」が民間ヘリコプターによる会員制の山岳救助活動を構想している。山岳保険に加入し、ヘリポート近くで救助を待てる比較的程度の軽い傷病者を想定。救助の選択肢の一つとして、北アルプスで今夏から試行する。

 ヘリ運航は朝日航洋(東京都)に委託。軽いけがや体調不良で自力下山が難しい登山者本人がアクトに救助要請し、アクトが救助が必要だと判断した場合、同社の駐機場がある都内か富山県から小型ヘリを飛ばす。ヘリは大町市社(やしろ)でアクトの救助隊員2人を乗せ、要救助者の待つ山上のヘリポートに向かう。

 今のところ離発着の許可を得ているのは常念岳(2857メートル)の常念小屋と白馬岳(2932メートル)の村営頂上宿舎それぞれの近くにあるヘリポート。実質的に、救助できるのはその近辺に限られる。

 利用者は会員登録(無料)し、山岳保険に加入するのが条件。朝日航洋によると、民間ヘリの救助費用は1回200万円前後かかるが、アクトと提携する日本費用補償少額短期保険(松本市)の「レスキュー費用保険」は、保険料4千円で最大300万円を補償する。救助費用は山岳保険会社からアクトに支払われ、アクトはヘリの運行費用を朝日航洋に支払う仕組みだ。

 警察や消防のヘリ救助は無償だが、天候や場所によっては各地区の山岳遭難防止対策協会の隊員が出動する。北ア北部地区遭対協では隊員1人当たり日当3万円と保険料1日約1万5千円を、救助を求めた人に請求しており、天候や時期によっては上乗せもある。

 県警ヘリなどの運用では、靴ずれや軽い疲労でも救助要請があるという。「本来、山では自己責任が原則」とアクト理事長の元村幸時さん(57)。あらかじめ山岳保険料を支払う会員制にすることで、いざという時の備えを怠らず、無理のない計画を立てるといった登山の心構えを再認識してほしい―と事業の狙いを説明する。

 今夏の試行は山小屋に夏山診療所が設けられる7月中旬〜8月末に実施予定。昨年秋に続き、今年春にも訓練を行うという。軌道に乗れば、離発着できる山上のヘリポートを増やしたい考えで、元村さんは「救助の受益者負担を可能にする新しい仕組みをつくりたい」と話している。

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