富山湾で2月、南方の海域に生息するハリセンボンが相次いで捕獲され、魚津水族館(魚津市三ケ)で展示されている。昨年6月にも4匹が見つかった。同館によると、これまでは発見が10~12月に集中しており、2月や6月に見つかるのは異例という。ハリセンボンは対馬暖流によって富山湾に入り、冬になると低水温で死ぬことから「死滅回遊魚」と呼ばれているが、同館は、海水温の上昇など生息域の変化によって、冬を生き延びた可能性があるとみている。
魚津水族館の記録では、ハリセンボンが県内で初めて捕獲されたのは1977年12月。以後、よく見つかるようになったが、発見時期は10~12月に集中。水温の低下で衰弱し、沿岸に打ち上げられたと考えられてきた。
ところが、昨年6月に魚津沖や射水市新湊沖の定置網や刺し網で計4匹捕獲され、今年2月に魚津沖、新湊沖で1匹ずつ見つかった。同館の稲村修館長は「2月や6月に捕獲されるのは非常に不思議。越冬したのかもしれない」と驚く。稲村館長は、まだ不明な点も多いとした上で、生息域の最低水温が上昇したか、富山湾に入ってくる数が増加した可能性を挙げる。
「死滅回遊魚」だった魚が富山湾に定着した例はある。浅場に生息する南方系のナマズの仲間で背びれなどに毒を持つゴンズイだ。同館の記録では県内で初めて見つかったのは1992年11月で、2009年1月に冬季も生息していることが確認された。現在は富山湾で年中、見られるという。
稲村館長は「日本海全体で南方系の魚が増えていることは間違いない。リュウグウノツカイやダイオウイカといった目立つ魚が注目されがちだが、小さな魚にも注目してみてほしい」と話している。