河童橋の上から大勢の観光客らが見守った上高地の閉山式=昨年11月15日、松本市安曇

河童橋の上から大勢の観光客らが見守った上高地の閉山式=昨年11月15日、松本市安曇

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北ア山小屋、厳しい春 新型コロナ...営業するか否か

信濃毎日新聞(2020年4月9日)

 政府が新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、緊急事態宣言を出したことを踏まえ、北アルプスの山小屋や宿泊施設が宿泊営業休止の検討を始めた。客や山小屋などの従業員がウイルスを持ち込む可能性もあり、営業上のリスクとなる。例年通りの営業を予定する施設も、外出自粛の呼びかけで客が減ることが懸念されている。

 槍・穂高連峰周辺の山小屋でつくる北ア山小屋友交会のうち、例年4月下旬からの春山シーズンに営業している12軒は、同宣言の期間中をめどに宿泊営業の休止を検討している。週内にも決める見通しで、会長で横尾山荘社長の山田直さん(58)は「山で体調不良の人が出た場合、市街地と違ってすぐに救護措置が取れない。まずは人命優先」と話す。

 標高約2300メートルにある山小屋「涸沢ヒュッテ」は、関東、関西在住の従業員が6人ほどいる。社長の山口孝さん(72)は「一番悩ましい問題。(山小屋の仕事を始める前に)2週間の待機期間を設けるかどうか...。状況が落ち着いてから入山してもらうことも考えている」と打ち明けた。

 ただ、シーズンが到来すれば登山者が入山し、キャンプ場が利用されることも見込まれるため、山小屋関係者は今月中旬に順次入山を始めるとしている。

 登山者にも感染拡大は大きく影響している。都内の左本(さもと)肇さん(73)は体力の衰えから今年の登山を最後にしようと、憧れの北ア・奥又白池へ登るつもりだったが、取りやめも検討している。「感染しているのに自覚症状がないまま移動するのは恐ろしい。新型コロナが早く終息してくれるのを祈るばかり」と語った。

 登山者だけでなく、散策などを目的とした客も多く訪れる上高地。松本市は、今月中旬から順次営業を予定していた上高地のホテルと食堂、山小屋の3施設について、当面営業開始を遅らせる方針。市山岳観光課は「緊急事態宣言で状況が一変した」とする。上高地観光旅館組合長で中の湯温泉旅館社長の小林清二さん(65)は、4月の予約状況は例年の2割ほどだとし、「海外からはもちろん、国内の客足も伸び悩んでいる」。

 乗鞍高原ののりくら観光協会長で、旅館「福島屋」を営む福島真さん(68)によると、緊急事態宣言の対象地域に住む客から「行ってもいいものか」との問い合わせがある。福島さんは「お客を泊めないと現金収入がないが、ウイルスが持ち込まれないとも限らない」と悩ましげに語った。

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