立山黒部アルペンルートは10日、弥陀ケ原(標高1930メートル)まで部分開通し、今シーズンの営業を開始した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛ムードは"雲上の別世界"にも及び、立山高原バスの始発便に乗った観光客は1人だけ。この日、乗車券を購入したのは5人にとどまった。新型コロナの影響を目の当たりにしたバス運転手やホテル関係者は「厳しいシーズンになりそう」「今は耐えるしかない」。15日の全線開通を控え、前例のない出足に不安の声が漏れた。
午前9時の弥陀ケ原は約4メートルの雪が積もり、気温は氷点下8度で雪が降っていた。感染対策のため、観光客のほかホテルの従業員ら約20人がバス2台に分乗し、運転中は車窓を数センチ開けて換気した。美女平(同977メートル)を出発した始発便に乗った岡山県の60代男性は「観光客が私1人と聞いて驚いた。新型コロナで今は仕方ないのかもしれないね」と語った。
午前9時40分ごろ、弥陀ケ原に到着。始発便の男性運転手(45)によると、例年の始発便は50~60人の観光客がバス2台に分乗するほどにぎわうといい、「15年この仕事をやっているがここまで少ないのは初めて。厳しいシーズンになりそう」と顔をしかめた。
弥陀ケ原ホテルは、例年なら全52室ある客室の8割が埋まるが、今年はほとんどが空室の状態。加藤弘支配人は「外出自粛要請も出ているので、今は我慢するしかない。全線開通してもお客が来るのか心配だ」と嘆いた。
アルペンルートを運営する立山黒部貫光(富山市桜町)の営業推進部担当、中川修専務によると、4、5月に入っていた海外からの団体観光客の予約は全てキャンセルとなり、10日時点で団体予約は例年の1割ほどしか入っていないという。