本棚が空になった森井書店の店内=金沢市尾張町1丁目

本棚が空になった森井書店の店内=金沢市尾張町1丁目

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尾張町の書店 店主高齢化、126年で幕

北國新聞(2020年4月30日)

 1894(明治27)年創業の老舗書店「紀陽館森井書店」(金沢市尾張町1丁目)は29日までに閉店した。店主の高齢化と客足の減少が理由という。126年間、4代にわたって親しまれた「まちの書店」の本棚は、返本によって空っぽになった。店主の森井清城(せいき)さん(85)は「年齢も考えたら今が潮時。店に誰も来ない」とぽつり。外商として5月半ばの配達を最後の仕事にする考えである。
 森井書店は金沢城跡に設置された陸軍第九師団司令部に新聞を納入する商店として始まった。2代目店主の森井ますさんは「兵隊ばあさん」の異名で知られた。書籍や新聞を届ける傍ら、兵士の家族からの荷物もひそかに預かり一緒に届けていたからだ。
 森井さんは26歳の時に婿入りして店を継いだ。以来、ますさんの孫に当たる静江さん(80)と二人三脚で店を営んできた。高度経済成長期、建設関係の資料集や専門雑誌を扱って販路を拡大した。「鶴来から神谷内まで、夏には冷たいコーラを差し入れして営業した。あの頃が一番楽しかった」と懐かしむ。その後、木造の店舗を3階建ての鉄筋に建て替えた。
 平成に入る頃から郊外に大型書店が進出し、強力な商売敵となった。21世紀に入ってからはインターネットを使った書籍販売が広がり、店に足を運ぶ人は目に見えて減った。
 年齢を理由に営業を続けることを心配する家族の声も受け入れ、今月13日にシャッターを下ろした。森井さんは「余力のあるうちに決められて良かった。新型コロナのせいとは言いたくない」とさっぱりとした表情で語った。
 県書店商業組合理事長を務める森井さんによると、組合に加盟する県内の書店は、昭和末期の約60店舗から40店舗ほどに減少したという。閉店後は組合の業務を他の役員に引き継ぐ考えである。
 空になった本棚を眺め、妻の静江さんは「さびしいような気持ちもするが、うちの人は頑張ったと思う」と夫をねぎらった。森井さんは「店の大小に関係なく、本屋は甘くない。今は底が見えない状態で、まるで深い洞窟にいるよう。本は見向きもされない時代になった」と嘆いた。

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