粟崎町5丁目の工房あすなろ代表の中山正弘さん(84)が、県木「能登ヒバ(アテ)」を用いた消臭剤を考案した。元々、木工おもちゃ作りに励んでいたが、左手に大けがを負ったことを機に新たなものづくりを模索し、3年がかりで完成させた。「地元産の素材の魅力を伸ばし、地域活性化に役立てたい」と夢を描いており、今後、販路を拡大して高齢者や障害者の雇用創出を目指す。
消臭剤は「香りあすなろ」と名付けた。能登ヒバの間伐材から抽出した蒸留水と精油を独自の製法で混ぜ合わせ、スプレー状にした。
能登地方に自生するクロモジの精油を使った商品開発に協力する医学博士で、和ハーブ協会(東京)の古谷暢基代表理事によると、能登ヒバに含まれる成分「ヒノキチオール」には、臭いの元となる細菌やカビを消毒する効果がある。希釈した精油を、衣類やドアノブなどに吹き掛けると、ウイルスなどの除菌効果も期待できるという。
中山さんは国内外の工場や発電所などの設計に携わり、定年後、妻の出身地である金沢に移り住んだ。能登ヒバなど地元木材を使ったおもちゃ作りを始めたが、4年前、作業中に木工機械で左手の指を切断した。
失意の底に沈むのもつかの間、介護現場などでの臭いから着想を得て、同じく木材を活用した消臭剤の開発を思い付いた。
60年以上、ものづくりの現場に立ってきた中山さんは「ハンディキャップがあっても、作り手としてやりがいが持てる。仕事があるのは人生の活力になる」と実感を口にする。
商品販売が軌道に乗ったら、障害者就労支援施設や地元のお年寄りとタッグを組む計画で、中山さんは「地域の素材を使って、地域に仕事を生み出し、みんなが和気あいあいと集まれる場を作りたい」と期待を膨らませる。香りあすなろは、工房で販売している。