リンゴの発泡性果実酒「シードル」の醸造が広がっている飯田下伊那地域で、昨冬に仕込んだ「新酒」が発売シーズンを迎え、個性的な銘柄が登場している。地元産のレモンを合わせたシードルや、洋ナシの果実酒「ポワレ」など、果樹栽培が盛んな地域ならではの味を農家が発信。伊那谷の生産者でつくる南信州シードル協議会は21日までオンラインによる催しでアピールしている。
喬木村のイチゴ農園「野風」は、柿の皮やイチゴをリンゴと合わせたシードルに加え、オレンジとレモンを掛け合わせた地元産のマイヤーレモンなどを使った新商品を作った。
2016年にシードルの専門家「ポム・ド・リエゾン」の認定を受けた同農園の清水純子さん(46)が考案。「作り方や原料で味が変わり、地酒のような魅力がある」と話す。ハーフボトル(375ミリリットル)は千〜1200円。飯田市の松屋ごとう酒店、モンマートいぎみ、松川町の直売所「もなりん」で販売している。
農家5軒が共同で伊那市の醸造所に委託醸造をしている松川町の堤原地区では、ふじをベースに4種類のリンゴを使ったシードル「ブリズ・ド・ベルジェ」を発売。名前は「果樹園のそよ風」を意味するフランス語で、750ミリリットル1800円。ラ・フランスのみで醸造したポワレ(750ミリリットル2400円)も発売した。
商品は5軒の農家が直売。生産者の一人、大場将博さん(43)は「洋ナシは香り高くスパークリングワインの感覚で楽しんでもらえる」とPRする。
同協議会は今月、「CIDER WEEK」と題した催しを企画。テレビ会議システムで松川町などの醸造所見学会やシードルの特典付き販売を行っている。協議会の広報担当、佐藤篤さん(46)は「醸造家が商品をオンラインでPRする弾みになっている。今後、消費者がシードルを幅広く手に取れるネット直販の仕組みを作りたい」としている。