政府の観光支援事業「GoToトラベル」が始まった22日、県内の温泉地にも県内外から観光客が訪れた。新型コロナウイルス感染予防のため、宿泊施設側は検温をしたり、個室で食事を取ってもらったり、細心の注意を払い、観光客も感染に警戒しながらの旅行となっている。
22日午後4時すぎ、下伊那郡阿智村の昼神温泉郷にある旅館「石苔亭(せきたいてい)いしだ」。岐阜県大垣市から自家用車で訪れた会社員東(ひがし)潤一さん(43)と妻加奈子さん(42)は、ロビーで検温と手の消毒をしていた。
20日に結婚20周年を迎えた。村が売りにしている星空を眺めたかったことと、比較的近く、首都圏からの観光客もまだ少ないうちなら「安全と考えた」と潤一さん。緊急事態宣言解除後の6月上旬に予約。「GoToトラベル」の割引を利用するという。
旅館は今月16日に営業を再開したばかり。接触感染を防ぐため、大浴場にバスタオルを置かないようにするなど念入りな対策も講じた。今後、客足がどれほど回復するか見通せないが、おかみの逸見貴子さん(47)は「感染者を出したら温泉全体の信用に関わる。対策を徹底してしっかりと受け入れたい」。
千曲市戸倉上山田温泉の亀清(かめせい)旅館には午後6時すぎ、神奈川県大和市の鈴木哲さん(73)が仲間2人と車で到着。約8カ月ぶりの来館に、主人のタイラー・リンチさん(49)は「元気でしたか」とうれしそうに迎えた。鈴木さんは健康チェックシートに記入し、検温。透明な仕切りを設けたフロント越しに「感染には最大限注意して来た。旅館の支援にもつながると思って遊びに来たよ」と話した。
諏訪市の諏訪湖畔で「RAKO華乃井ホテル」などを運営する会社の社長、白鳥和美さん(51)は「宿泊客や従業員の間でクラスター(感染者集団)が発生しないか心配はある」としつつ、「(GoToトラベルは)追い風になる」。だが、この日は湖上に毎晩花火を打ち上げる誘客の催し「諏訪湖サマーナイト花火」(8月1~22日)の中止が正式に発表された。白鳥さんは「花火は諏訪の一つのブランド。残念だが、仕方がない」と話した。