福井県ゆかりの詩人三好達治(1900~64年)の生前最後の詩「春の落葉」の直筆原稿が8月8日、福井県ふるさと文学館が開設した三好の生誕120年記念コーナーで全国初公開された。三好の推敲の跡が残る草稿1枚と、編集者とやりとりした2枚の計3枚の原稿用紙。同館職員が昨年、東京に住む親族宅で発見し、今年3月に同館が入手した。
三好は大阪府生まれ。東京帝大卒業後、30年に処女詩集「測量船」を発刊。44年に現在の福井県坂井市三国町に疎開し、5年間を過ごした。福井県民歌や三国、大野高校の校歌も手掛けた昭和の代表的詩人。
「春の落葉」は、三好が心筋梗塞で亡くなる5日前の64年3月31日に書き上げた最後の詩で、同年6月号の「小説新潮」に掲載された。同館職員が昨年9月、資料調査で親族宅を訪れた際に発見。貴重な絶筆と分かった。3枚の原稿用紙には、赤や青の文字で編集者や三好の直しが入っている。
同館の岩田陽子学芸員によると、三好は急死だったが、詩には「『大河は海に下りゆく』など、自身の行く末を案じていたような表現も見られる」という。「詩人の最後にふさわしい洗練された作品。自分の人生に重ねて移ろいゆく季節や風景を表現しながら、普遍的なものを感じさせる」と話していた。
開設された特集コーナーでは、他の直筆原稿をはじめ、中野重治や谷川俊太郎らの寄稿を掲載した「本の手帖」三好達治追悼号、書幅「師よ萩原朔太郎」など貴重な資料13点を展示している。9月22日まで。
新型コロナの感染予防を考慮し、文学館ホームページでも「春の落葉」直筆原稿を公開している。