高岡で展示された工芸品や調度品=3月、高岡市の高岡商工ビル

高岡で展示された工芸品や調度品=3月、高岡市の高岡商工ビル

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松楓殿の工芸品 金沢で初展示 今秋、ふるさと偉人館

北國新聞(2020年8月20日)

 高岡生まれ、金沢育ちの世界的化学者、高峰譲吉博士が米ニューヨーク郊外に構えた別荘「松楓殿(しょうふうでん)」を飾った日本製の工芸品や調度品が今秋、金沢で初めて公開される。金沢市ふるさと偉人館が、高岡市に寄贈された作品のうち約40点を特別展示することになった。20世紀初頭の米国に日本文化を紹介した高峰博士の功績を伝え、10月25日の東京国立近代美術館工芸館開館の機運を盛り上げる。
 工芸品や調度品は、松楓殿の所有者だった実業家、滝富夫氏から寄贈を受けた高岡市が管理している。3月に同市の高岡商工ビルで3日間限定で一部が展示され、多くの人が観覧に訪れた。
 国立工芸館開館によって北陸で工芸への関心が高まると予想される中、工芸などを通して和の魅力を西洋に紹介した「文化大使」としての高峰博士の一面に光を当てようと、偉人館が展示を企画した。
 会期は10月17日~11月23日で、北陸発の九谷焼や高岡銅器のほか、椅子、テーブル、壁画、衝立(ついたて)などを高岡市から借り受けて展示する。このうち目玉の一つは背もたれに菊とアイリスをあしらった金色の「春日式椅子」だ。小松市出身で富山県工芸学校(現高岡工芸高)で教えた彫刻家、村上九郎作(くろさく)が美術商社山中商会(大阪市)在籍中の明治30年代に監修した。
 高岡市の依頼で松楓殿工芸品の調査に携わった鶴野俊哉石川県立美術館学芸担当課長によると、椅子は日本伝統の欄間彫刻の技と当時西洋で最先端の様式だった「アール・ヌーボー」の融合を試みた作品として独創性が光る。
 ふるさと偉人館の増山仁学芸員は「民間外交の舞台だった松楓殿の品には、日本文化を西洋人にどう伝えるかを追究した高峰博士の考えが色濃く反映されている」と述べ、コレクションのユニークさを強調した。
 11月3日は、偉人館の敷地内にある高峰博士の胸像前で生誕記念献花祭が行われた後、記念講演会が開かれ、工芸品の特徴などを鶴野氏が解説する。

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