七尾市は23日、国史跡「七尾城跡」の中心部となる本丸跡周辺で初めて本格調査を開始した。11月末まで実施し、今回は本丸跡近くの「調度丸」があったとされる石塁の周りで発掘を行う。七尾城は日本最大級の山城に数えられるものの、多くの謎に包まれており、実態解明に向けて新たな一歩を踏み出した。
23日は発掘の拠点となるテントの設営や、スコップなどの資材を搬入し、石塁周辺の除草などに取り組んだ。24日から実際に土を掘る作業に入る。
市によると、調度丸は本丸跡の北西に位置し、日用品を納めていたとされる。土塀の基礎となる長さ20・1メートル、幅1・4メートルの石塁が地面に露出した状態で残されているほか、江戸時代の絵図にもその存在が描かれている。明治期には天目茶わんが出土しており、市は文化人による茶会などの文芸活動の舞台だった可能性もあるとみている。
ただ、これまでは具体的な調査を実施しておらず、実態は不透明な部分が多い。今回の調査では、調度丸が築かれていた根拠となる出土品を探すほか、石塁の詳細な構造や規模、屋敷内の建物跡などを確かめる。
発掘の範囲は約100平方メートルとなる。不必要に現場を荒らさないよう、部分的に区画を決めて地面を掘り起こす。作業は原則平日に実施し、現場は一般公開する。市の担当者は「何かが出土する可能性があり、歴史的な瞬間に立ち会えるかもしれない」と呼び掛けている。
市は、将来的に調度丸だけでなく、本丸跡などに調査範囲を広げ、復元も視野に入れている。