北方領土のジオラマを見て、昔を懐かしむ元島民ら=県北方領土史料室

北方領土のジオラマを見て、昔を懐かしむ元島民ら=県北方領土史料室

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北方領土返還の思い新た 黒部に史料室開設

北日本新聞(2020年9月30日)

 「県北方領土史料室」が29日、黒部市コミュニティセンター(同市生地中区)内にオープンした。北海道以外で自治体が北方領土関連施設を整備するのは初めて。完成セレモニーが同センターであり、元島民ら関係者約100人が開設を祝うとともに、返還実現への思いを新たにした。

 北方領土返還要求運動県民会議が、北方領土問題対策協会(北対協)と県、黒部市と共に整備した。コンセプトは「次世代につなぐ 返還実現の想(おも)い」。ジオラマや写真、史料、年表の展示のほか、島のライブ映像や元島民のインタビュー上映などで北方領土問題の歴史と現状を紹介する。

 「懐かしい」。小学4年から終戦までの数年間、歯舞群島の水晶島で過ごした浄土時枝さん(88)=黒部市飯沢=は、北海道根室市から寄贈された島々のジオラマをいとおしそうに眺めた。「返還運動を続けてきたが若い人に譲ろうと思う」と感慨深げだ。

 県内は北方四島からの引き揚げ者が北海道に次いで多く、元島民らは施設整備を求め続けてきた。元島民でつくる千島歯舞諸島居住者連盟富山支部の吉田義久支部長(83)は「先代の苦労が実感として語り継がれるのではないか」と話す。

 9歳まで歯舞群島の多楽島で過ごした中陳さつ子さん(84)=同市生地中区=は「史料室に来れば現状を分かってもらえると思う。日本の領土なのだから必ず返してもらえるようにしてほしい」と願った。

 クイズや映像で領土問題を学べるタブレット端末もあり、同市清明中3年の高野なるみさん(15)は「今までより北方領土を近く感じられた」と話した。

 セレモニーで、県民会議会長の上田英俊県議会議長があいさつ。石井隆一知事と宮腰光寛衆院議員が祝辞を述べ、諸星衛北対協理事長と石垣雅敏根室市長が激励した。史料室長の大野久芳黒部市長が開設経過を説明。関係者でテープカットし、地元の小中学生も加わってくす玉を割った。

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