新潟県佐渡のヤブツバキの種だけを搾った椿(つばき)オイル「SADO」。手に取るとさらっと広がり、柔らかく肌を包み込む。佐渡市宿根木の旅館「御宿 花の木」を営む渡辺明子さん(66)が、15年かけて完成させた。
渡辺さんは45年ほど前に名古屋市から佐渡へ移住した。その頃、父が「余命2年」と言われた。体にいい油を取ってほしいと考えたが、オリーブオイルは受け付けなかった。そこで着目したのが、島に多いヤブツバキだった。
江戸時代に佐渡奉行所が奨励したため、島内には採取用の椿林があった。全国トップ級の椿油産地だったが戦後、他の油に押されて衰退した。
渡辺さんは、地元のお年寄りから「昔は椿の種を拾って帰ると、家計の足しになると親が喜んでくれた」という話を聞いたこともあり、種を買い取ると呼び掛けた。種が1トン集まるようになったタイミングで商品化に踏み切った。
種は洗って天日に干し、熱を加えずに搾る。透き通った上澄みだけをオイルにする。食用はもちろん、皮膚の成分に近いオレイン酸が豊富なため、肌や髪のケアにも向く。全国にファンが多く、歌舞伎の坂東玉三郎さんもその1人という。
「椿油の伝統を次の世代にもつなげられたら」と渡辺さん。オイルの名「SADO」には、島の椿や種を集める人々への感謝を込めた。
◇ ◇ ◇
市内は御宿花の木と椿屋陶芸館で、市外では新潟伊勢丹(新潟市中央区)で販売。65グラム入りボトル4500円、20グラム入りボトル1900円(いずれも税抜き)。問い合わせは椿屋陶芸館、0259(63)5555。