文芸ファンの熱気があふれる授賞式の会場=金沢市文化ホール

文芸ファンの熱気があふれる授賞式の会場=金沢市文化ホール

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「業平は日本文化の源流」 泉鏡花文学賞授賞式 髙樹のぶ子さん喜び

北國新聞(2020年11月22日)

 金沢市が制定する第48回泉鏡花文学賞の授賞式は21日、市文化ホールで行われ、「小説伊勢物語業平(なりひら)」で受賞した髙樹のぶ子さん(74)が「新たな門出となる作品で賞を頂けてうれしい。鏡花にもつながる日本文化の源流となった業平を広めていきたい」と喜びを語った。コロナ禍で各地の文学賞の贈呈式が中止となる中、感染防止策を徹底した会場は文芸ファンであふれ、文学のまち・金沢の姿を映し出した。
 感染対策を徹底するため会場を例年の市民芸術村から文化ホールに変更した。座席は半数に制限したが、例年より50人多い約400人が祝福に駆け付けた。
 式では山野之義市長が髙樹さんに正賞の八稜鏡(はちりょうきょう)と副賞の100万円を手渡した。選考委員のうち村松友●(●は示ヘンに見)、嵐山光三郎、山田詠美、綿矢りさの4氏が出席。五木寛之、金井美恵子の両氏は欠席した。
 芥川・直木賞をはじめ文学賞贈呈式が中止や簡略化がされる中での開催に、芥川賞選考委員でもある山田さんは「式は受賞者にとって励みとなる重要なもの。ここまで気を使ってやってもらったことに意味がある」と評価。嵐山さんは「金沢は腹が据わっている。金沢の文化の力だ」と話した。
 授賞作紹介で登壇した村松さんは「業平という人物の輪郭を小説として初めて描き、古典の語り芸をおり合わせたような独特の文体を編み出された」とたたえ、「業平にみずみずしく懸想(けそう)してくれた高樹さんに感謝したい」と述べた。
 綿矢さんは「教材として親しんだ業平が、現代に鮮やかに息を吹き返した」と祝いの言葉を贈った。
 式では山野市長が式辞、野本正人市議会議長が祝辞を述べた。泉鏡花記念市民文学賞を受けた栂(とが)満智子さん(68)、松下卓さん(62)=いずれも金沢市=の授賞式も行われた。

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