富山県南砺市利賀村を拠点に活動する劇団SCOT(鈴木忠志主宰)の公演「ウインター・シーズン」が26日、同市の県利賀芸術公園にある利賀大山房で開幕した。観客約130人を前に、今年県内で初演した2作品を上演。日本人の精神性や社会の在り方を問い掛けた。27日まで。
劇団SCOTが利賀で年末に公演を行うのは、1996年以来24年ぶり。新型コロナウイルスの感染予防策を講じた上で実施した。
上演したのは「ニッポンジン―長谷川伸の作品より―」と「世界の果てからこんにちはII」。いずれも鈴木主宰が手掛けた作品で、「コロナ禍で世界から分断された今、改めて日本という国について考えるきっかけにしたい」との思いが込められている。
「ニッポンジン―」は生き別れた母と子を描いた長谷川伸の戯曲「瞼(まぶた)の母」を下敷きに構成。個人や家族が分断される現代社会の実相を浮かび上がらせた。
「世界の果てから―」は美空ひばりさんや北島三郎さんの演歌などを交え、戦後の歩みをたどった。暗闇の中でスポットライトに照らされた出演者たちは、車椅子に乗って動き回り、力強い声を響かせた。
会場には県内外からファンが訪れた。東京都東村山市の50代公務員男性は「コロナ禍でも、世界に向けて演劇を発信し続ける姿に勇気をもらった」と語った。
27日は午後2時開演。観覧は事前申し込みが必要。問い合わせはSCOT利賀事務所、電話0763(68)8001。