玄関先に田の神様を案内する吉村さん=能登町国重

玄関先に田の神様を案内する吉村さん=能登町国重

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静かに田の神送る 奥能登各地で「あえのこと」 感染予防に配慮、豊作祈る

北國新聞(2021年2月10日)

 田の神様を家から送り出す農耕儀礼で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産となっている「あえのこと」が9日、奥能登各地で営まれた。見学者を制限して予約制としたり、映像を生配信したりするなど、近年にない対応を取るケースも。各家の主は感染症予防に配慮しながら、古くからの作法通り、静かに田の神を送り出し、豊作や家内安全に願いを込めた。
 集落合同で儀礼を営む能登町国重(くにしげ)では、国重田の神様保存会長で、あえのこと継承で県の「ふるさとの匠(たくみ)」に認定されている吉村安弘さん(77)が、田の神様に小豆飯やメギスの団子汁など山海の幸を振る舞った。今年は雪が多いため神様を田に送り出さず、3月9日まで玄関先で休んでもらう。
 柳田植物公園の古民家「合鹿庵(ごうろくあん)」では、町あえのこと保存会員の中正道さん(69)が主人役を務めた。儀礼の様子は動画サイトで生中継された。
 山口集会所では、地元の住民でつくる「山口みどりの里保存会」が神事を執り行った。吉延孝治さん(67)が主人役を務め、東大生5人と若手住民が儀礼の様子をインターネット会議システムで初めて中継し、全国の25人が視聴した。
 輪島市三井町小泉の交流施設「茅葺(かやぶき)庵(あん) 档(あて)の館」で営まれた「田の神様まつり」では、三井公民館の山形孝嗣館長(77)が、田の神様を風呂や食事でもてなし、近くの田にいざなった。
 輪島市白米(しろよね)町、公務員川口喜仙(よしのり)さん(56)方では、夫婦神を風呂場に案内し、輪島塗の膳に盛り付けたおはぎやブリの刺し身などの料理でもてなした。この後、田の神を自宅隣の棚田に導き、鍬(くわ)を入れた。
 穴水町藤巻の森川祐征さん(81)方では、かぶらずしやブリの刺し身、近隣の山でとれたキノコのみそ汁などで、田の神様をもてなし、水田へ送り出した。
 珠洲市若山町火宮の田中茂好さん(69)方では、12月の神事と同様に見学者を入れずに田の神様を送り出した。

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