半世紀にわたり、ツバキの品種改良に取り組む県つばき会長の松井清造さん(72)=旭町3丁目=に、孫の松本廉さん(18)が「弟子入り」した。今月、赤黒い花弁の新品種「黒(こく)有(ゆう)彩(さい)」を開花させるなど、交配で新たな花を世に送り出す祖父とともに、「青色ツバキ」開発の夢を追いかける。
松本さんは幼い頃から、松井さんがツバキの世話をするのを見てきた。翠星高で植物について詳しく学び、「じいちゃんが挑戦していることの難しさが改めて分かった」という。卒業後の今も、「祖父の技術を途絶えさせたくない」と、松井さんが約3千種のツバキを栽培する若松町のビニールハウスに通う。
今月、花開いた新品種は一重で、直径は7、8センチ。松井さんが2014年、郷土の花「クロユリ」のような上品な見た目を思い描き、金沢原産の「西王母(せいおうぼ)」と英国産「ブラックマジック」を交配した。
黒みを帯びた色合いから県つばき会名誉会長で彫(ちょう)金(きん)人間国宝の中川衛さんが「黒有彩」と命名。松井さんは「花と葉のバランスが良く、茶席にぴったりの花ができた」と喜んだ。
黒有彩のように、ツバキは交配から開花まで6~8年ほどかかる。松井さんは、念願の青色のツバキを「自分の代で成し遂げられなくても、孫の代でいずれか成功してほしい」と顔をほころばせる。松本さんは「じいちゃんの技を受け継ぐとともに、これからインターネット販売といった新しい試みも始めたい」と意気込んだ。
県つばき会は来月6、7日、金沢駅東もてなしドーム地下広場で「百万石つばき展」(北國新聞社後援)を開き、黒有彩を含む約300品種を展示する。松井さんと松本さん合作の竹のオブジェを設置し、ツバキを生ける。各日とも県産品種の苗を無料配布する。