富山市水橋地域のホタルイカ漁師でつくる水橋漁民合同組合は今夏、県内の海と川、山を巡る自然体験ツアーを始める。全国から参加者を募る子ども向けの宿泊旅行で、富山湾での漁業も体験する。富山の豊かな自然の中で環境保全や食育に理解を深めてもらうツアーを定着させ、将来の1次産業の担い手確保にもつなげる。
水橋漁民合同組合は、新型コロナウイルスの感染がいったん落ち着いた昨年11月、試験的にツアーを開催した。東京から親子8組が参加し好評を得たことから、本格的に始めることを決めた。
予定している内容は、川の水質調査や清掃のほか、山での間伐や草刈りの体験だ。水橋漁港から船を出して富山湾でかごや網を使った漁にも挑戦し、収穫した魚の選別作業や競り、調理を経験してもらう。
これらの体験だけではなく、それぞれの担い手による"授業"を受けられるのも特徴だ。「山が荒廃する理由」「なぜ魚の取れる量が減ったか」など、時代の変化や現在の課題などについて理解を深めてもらう。
背景には、農林水産を中心とした国内の1次産業の担い手不足に対する危機感がある。国勢調査によると、県内では2015年が1万7599人で、20年間で半減した。高齢化も深刻化しており、将来の担い手確保が急務だ。
課題解決に向け、同組合は、これまでにも地引き網の体験会などを開催してきた。水橋漁港そばで漁師食堂のオープンも計画するなど、漁業のPRに取り組んでいる。今夏のツアーでは、これまでのイベントで培ったノウハウや開設予定の食堂を活用し、参加者の満足度を高めたい考えだ。参加者募集に向けては旅行会社とも連携する。
安倍久智組合長は「多くの子どもたちに富山の自然の魅力を知ってもらい、将来の担い手確保につなげたい」としている。