5月に行われる能登を代表する祭礼「青柏祭(せいはくさい)」で、名物の巨大な山車(だし)「でか山」を引く3町のうち、七尾市鍛冶町と魚町が昨年に続き巡行中止を決めた。新型コロナ収束のめどがたたず、観客の安全を確保できないと判断した。残る府中町は単独での巡行も選択肢とし、検討を続ける。戦国期に始まったとされる祭りは2年連続で通常通りに行えず、関係者は伝統の継承へ危機感を募らせている。
25日夜、3町でつくるでか山保存会の新年総会で、鍛冶町と魚町の総代が巡行中止を報告した。府中町は他地域の祭りの対応や町民の反応を見ながら4月上旬まで検討を続けるとした。
青柏祭は同市山王町の大(おお)地主(とこぬし)神社の春の例大祭。でか山は例年5月3~5日に市中心部を巡行しており、高さ12メートル、重さ約20トン、車輪の直径2メートルのでか山を各町の男衆らが引き、直角に方向転換する「辻廻(つじまわ)し」など迫力ある姿を見ようと大勢の観光客が訪れる。昨年は戦後初の中止となった。
鍛冶町と魚町は当初、巡行再開を目指し、引き手を限定したり、でか山を組み立てる若衆のPCR検査を実施したりするなどの対策を検討してきた。しかし、検査にかかる経費の負担が問題になったほか、無観客開催や日程の縮小は本来の形から外れるとの意見でまとまり、中止を決めた。
魚町の中村巧総代は「当初は半数以上が実施に賛成だったが、コロナ禍が収まらず最終的には反対が多くなった。祭りで培われてきた地域の人間関係が薄れていくのを危惧している」と残念そうに話した。
府中町は同町のみでの実施も視野に入れている。中越政秀総代は「祭りの時だけ帰省する若者も多い。2年も間が空くと伝統の継承が心配だ」と話した。でか山保存会は、府中町が単独で巡行した場合の支援も検討する。
青柏祭の神事は例年通り4日に営まれる見通しとなっている。
七尾四大祭りとされる青柏祭、能登島向田の火祭、石崎奉燈祭、お熊甲祭(くまかぶとまつり)は昨年、全て中止となった。今年の青柏祭の動向は今後、他の能登地域の祭りにも影響するとみられる。