金沢市は8日までに、工芸作家の作品をインターネット上で閲覧できるデジタル工芸展(北國新聞社特別協力)を新年度も実施することを決めた。今月末までが会期だったが、閲覧者数が35万人を超えるなど好評なため、内容を充実させて継続する。オンライン企画展を新たに開催し、市内で開かれている展示会情報の発信、海外での販路開拓に向けた多言語対応も進める。
デジタル工芸展は、新型コロナの影響で作品発表の機会が少なくなった作家を後押しする試みで、昨年5月29日に始まった。作品の紹介や制作風景の動画、作家のメッセージを視聴でき、8日時点の閲覧者数は36万6331人となった。
デジタル工芸展をきっかけにギャラリーでの個展開催が決まった出展作家もおり、作家と閲覧者双方から4月以降の継続開催を望む声が市に寄せられていた。
新たに実施するオンライン企画展では、8日まで開催された第77回市工芸展(本社など後援)の入賞作品を紹介する展示を予定している。作家が作品に込めた思いも記載し、コロナ禍で会場を訪れることができなかった人にも工芸品を鑑賞する機会をつくる。市は今後、金箔(きんぱく)をテーマにした企画展の開催も検討する。
このほか、市内で工芸品を扱う小売店やギャラリーで開かれる展示会の情報を配信する。海外の閲覧者向けに、英語、フランス語、中国語(簡体字・繁体字)で作家の経歴や作品制作に懸ける思いを掲載する。
市クラフト政策推進課の担当者は、会場で作品を見たり、手に取ったりして作品のすばらしさを五感で感じてもらうことが工芸の魅力発信には欠かせないと指摘する。一方、コロナの収束が見通せない現状も考慮し、「いつでも、どこでも鑑賞することができるオンラインの強みを生かし、金沢の工芸ファンの獲得につなげたい」と話した。