伊那市は9日、タカトオコヒガンザクラで知られる市内の高遠城址(じょうし)公園が会場の「さくら祭り」を4月1日から開催すると発表した。昨年は新型コロナウイルスの影響で、期間中の入園を有料化した1983(昭和58)年以降、初めての中止に。感染防止対策で公園も閉鎖した。2年ぶりの開催に地元の商店や観光事業者は「明るい話題」と歓迎しつつ、収束が見通せないだけに例年より観桜客は少ないだろうとの声も聞かれた。
「2年もないと忘れられてしまう。ありがたい」。同市高遠町の赤羽菓子店社長、赤羽敏さん(57)は開催の決定を歓迎した。例年、園内に出店して名物の「高遠まんじゅう」など土産品を販売しており「今年は客が少ないかもしれないけれど、感染対策をして出店したい」と話す。
地元の観光事業者にとって桜が見頃になる4月は一番の「書き入れ時」だ。2019年は県内外から約16万人が訪れたが、昨年は新型コロナの影響でひっそりとしたままだった。高遠観光タクシー社長の春日裕さん(62)は「前を向いて進む良いスタートになってほしい」と期待する。
一方、近くで竹松旅館を営む竹松泰義さん(76)は「来てくれるのはうれしいけれど、感染の心配もある」との悩ましさを口にする。
開催を決めた理由について伊那市は「全国的に感染者数が減少していることや、中止した場合に地元経済への影響が大きい」などと説明。園内の密集を避けるため、飲食エリアを限定するといった対策を講じるとしている。
タカトオコヒガンザクラは濃いピンク色が特長で、園内の約1500本は「天下第一の桜」として親しまれる。近くに住む女性(73)は「やっぱり高遠の桜が一番。昨年は町が寂しかった。きれいに咲く桜を見に行けるのはうれしい」とほほ笑んだ。
祭りは市などでつくる実行委員会の主催。期間は桜の「散り終わり」まで。開花宣言の翌日から有料(大人500円など)にして、入園時間は午前8時~午後5時。開花状況次第で午前7時~午後9時とする。