2019年10月の台風19号で被災し、赤い鉄橋「千曲川橋梁(きょうりょう)」が一部崩落した上田電鉄別所線(上田市)は28日、全線開通した。橋梁復旧に向けた寄付や署名活動が全国に広がり、行政の財政支援も受けて復活。電車が鉄橋を渡る姿を市民らが見守り、1年5カ月半ぶりに取り戻した日常の光景に喜びが広がった。
午前6時前、被災後に乗客を乗せて初めて橋梁を渡る臨時の「1番列車」が上田駅を出発。児平高明駅長(52)は「久しぶりに電車が止まって駅に活気が戻った。多くの思いが再び赤い鉄橋を架けてくれた」と感謝し、出発の合図を出した。列車には193人が乗車した。
橋梁近くの左岸堤防道路で式典を開催。午前11時15分ごろ、橋梁上に止まった記念列車を背に赤羽一嘉国土交通大臣、阿部守一知事、土屋陽一市長らがテープカットをした。
千曲川橋梁(224メートル)は19年10月13日朝、千曲川の増水で同市諏訪形の左岸堤防が削られ左岸側44メートルが落ちた。市議会は20年1月24日、復旧事業費8億6680万円の97・5%を国が実質負担する代わりに、市が橋梁を保有する議案を可決。全線開通への道筋がついた。ただ、新型コロナウイルス感染拡大が響き乗客確保は引き続き課題だ。
式典後に開かれた橋梁復旧の事業報告会で、土屋勝浩・市議会議長は「増客や経営改善などの課題に全力を尽くし、復旧後にV字回復した奇跡の鉄道と称される鉄道会社になってほしい」とあいさつ。上田電鉄の山本修社長は閉会のあいさつで「これからがスタート。支援したかいがあったと思われるよう地元に密着し、愛される別所線として精進していく」と述べた。