工芸の作品解説に耳を傾ける来場者=金沢市の石川県立美術館

工芸の作品解説に耳を傾ける来場者=金沢市の石川県立美術館

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現代美術展 深い鑑賞へ作家が導く

北國新聞(2021年3月30日)

 金沢市の石川県立美術館と金沢21世紀美術館で開かれている第77回現代美術展(一般財団法人県美術文化協会、北國新聞社など主催)は29日、工芸部門を皮切りに作品解説が始まった。現美では、一線で活躍する作家陣が出品作に凝らされた技法や作者の横顔などを紹介し、より深い鑑賞へ導いている。来場者は解説に耳を傾け、一見しただけでは分からない創作のこだわりや美意識に理解を深めた。
 昨年の前回展では新型コロナウイルス感染防止の観点から作品解説を中止したが、今年は例年通り会期中の平日に部門ごとの解説を実施する。
 初回の工芸部門は十一代大樋長左衛門さんが解説者となり、展示会場の県立美術館で解説を行った。
 美術文化準大賞を射止めた毎田仁嗣さん(金沢市)の「友禅訪問着『水の音(ね)』」の前では、大樋さんは「3回くらいに分けて染めることで色の重なりが立体的に現れている」とし、従来の加賀友禅とはひと味違う水の表現を模索する作者の創意をたたえた。
 夜桜を描いた沈金人間国宝・前史雄氏の作品については、「堂々とした余白が夜空の広がりを想像させる。若い人は余白を恐れて絵を過剰に描き込みがちだ」とし、構図への確固たる自信は長い錬磨によって培われると述べた。
 現美の意義について、大樋さんは、作家が所属団体などの垣根を越えて交わる希有(けう)な場だと説明。「プロ野球でいう『公式戦』は現美から始まる。ここで他の作家の作品を見て修正をかけていく」とし、切磋琢(せっさたく)磨(ま)を促す役割を強調した。
 2日連続で鑑賞に訪れている西田隆一さん(69)=金沢市小坂町=は「余白の意味合いなどを聞いた後では見え方がまるで違った。自分も陶芸を始めたところで、素晴らしい作品との触れ合いをプラスに生かしたい」と話した。
 30日午後1時からは、金沢21世紀美術館で石田陽介さん(彫刻)が解説する。現代美術展は4月13日まで。日本画、工芸、書は県立美術館、洋画、彫刻、写真は金沢21世紀美術館で展示している。
 入場料は一般1千円、高校・大学生600円、小中学生500円。

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