「青」が代名詞になって40年がたった。ライフワークとして描く古里の冬の川も、近年モチーフに取り入れたガラス張りの美術館の絵も、一貫して青色が基調だ。福井県福井市の洋画家で一陽会委員の清水正男さん(70)が4月7~11日に同市美術館で開く個展「未来へ! 清水正男軌跡展」(福井新聞社後援)には、"清水ブルー"に彩られた大作約70点が並ぶ。
県美術の会会長や市美展ふくい実行委員長、福井一陽会副会長を務める清水さんが、本格的に油彩画を描き始めたのは30歳のころ。美術教師として大先輩だった洋画家の佐川文子さん(福井市)に勧められた。
当時、題材を求めて四季の風景を訪ね歩き、たどりついた冬の九頭竜川。「とうとうと流れる川が自分には青黒く映り、存在感に圧倒された」。以来、黒を混ぜた深みのある青で川面を描くようになり、河川敷の雪化粧と対比させてキャンバスに表現してきた。
2007年、モチーフの幅を広げる転機が訪れた。開館間もない国立新美術館(東京)で見た光景。一面のガラス窓から夕日が差し込むと、無機質な空間がぬくもりのある場所に変化したことに刺激を受けた。ガラスや鉄骨構造物を、やはり青を基調に何枚も描いた。
「振り返れば、自然景観も建造物も、青で描いてきたのは人を取り巻く環境や空間だった」。公園で遊ぶ子やたたずむ女性を題材にしたシリーズもあるが、底流にあるのは人が集う空間を描くという視点だ。