2018年に全焼した福井県あわら市の老舗温泉旅館「べにや」が、今夏の営業再開を予定している。当時焼け跡から見つかったのが、同旅館を愛した故石原裕次郎さんや故渡哲也さんの40年前の歌声が録音されていたCD-R。奇跡的に復元され2月に発売されたCDが、老舗旅館"復活"を後押しする。
べにやは1884年創業で、小説家・詩人の高見順、作家の水上勉のほか、故志村けんさんら多くの著名人に愛されてきた。本館・中央館・東館の3棟は国登録有形文化財に登録されていたが、火災で全焼した。
先代主人は石原さんと学生時代からの友人で、デビュー前から親交があった。互いに涙しながら一晩中語り合ったこともあったという。プライベートでも足しげく通い、よく旅館内のバーでカラオケを楽しんだ。その様子が収められたカセットテープは一部CD-Rにして、旅館を訪れたファンが食事やバーのお供に曲を楽しむことができた。
焼け跡から見つかった金庫にはカセットテープ11本、CD-R3枚などが保管されていた。熱の影響でカセットテープはゆがみ、CD-Rは音が出なかった。旅館関係者は再生を諦めていたが、レコード会社のテイチク(東京)が昨秋、復活に成功しCD化を果たした。
CDにはプライベート音源16曲を収録。拍手や歓声、会話も入っており、宴会のにぎやかな雰囲気が伝わる。ほかにも、歌詞の一部を「べにや」に言い換えたり、渡さんとのデュエットがあったりするなど、ファン垂ぜんの一枚となっている。
同旅館の社長は「自分たちにとってとても大切なものだった。皆さんに聴いてもらえる喜びは大きい。また、CD発売と同じ年に、べにやを復活できることをうれしく思う」と話している。
「石原裕次郎・渡哲也 プライベート2」としてテイチクから発売されている。
新しい「べにや」は、フロントや厨房が入る棟、17部屋が入る客室棟の4棟から成る。現在、外装工事がほぼ完了し内装工事中。