100年前の輝きを取り戻したステンドグラス=内灘町

100年前の輝きを取り戻したステンドグラス=内灘町

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香林坊の大正モダン輝き再び 洋食店「仙宝閣」のステンドグラス 100年前、県内最初期の作

北國新聞(2021年5月12日)

<作家・辺本さん 内灘で確認、修復>

 大正時代から香林坊のランドマークとして親しまれた洋食店「仙宝閣(せんぽうかく)」に飾られていた100年前のステンドグラスが内灘町で見つかり、11日までに修復された。果物を持った女神を表現した大型の作品で、石川県内の建物に使われたステンドグラスでは最も初期の品という。専門家は「ハイカラ好みの武家文化を背景とした金沢のモダニズムを物語る貴重な大衆資料」とし、活用に期待している。

 ステンドグラスは縦1・5メートル、横90センチで、果物が盛りつけられた高杯を持つ女神を描いている。内灘町の個人宅で長く保管されていたが、ステンドグラス作家、辺本良治さん(70)が修復を目的に譲り受け、弟子3人と1年3カ月をかけて当時の姿によみがえらせた。

 仙宝閣は1919(大正8)年、現在の香林坊アトリオ付近で創業。西洋レストランの草分けとなる3階建て洋館で、ダンスホールやステージを備えた広間もあった。古くは旧制四高生や文化人が愛し、社交クラブ、結婚式にも使われたが昭和50年代に再開発のため惜しまれながら取り壊された。

 見つかった作品は2階の廊下に飾られていたという。当時、建物の窓や内装には二十数枚のステンドグラスが使われていたが、多くが散逸しており、現存する希少な一枚となる。

 小林忠雄県文化財保護審議会委員によると、作品は清朝末期のガラスが使われた明治期の品とみられる。当時、国内でステンドグラスは教会を除きほとんど普及しておらず、「藩政期からの進取の気風と、金沢の西洋化の始まりを象徴する好資料」とする。

 修復作業では、経年による汚れや、ガラスを支える枠のゆがみなどが見られたため、辺本さんらが369片のガラスを取り外して洗浄。新たにガラスをはめ込む枠組みを作り直し、再生した。

 ひび割れなどがあるガラスはあえて取り替えずに残し、歴史の風合いを伝えているという。辺本さんは「香林坊など、ゆかりの地で活用してもらえるとうれしい」と話した。 

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