福井県あわら市の造形作家、つたにひろこさん(73)の個展「慚愧(ざんぎ)と歓喜の交錯」が、同市の金津創作の森美術館で開かれている。千を超える和紙製のバラを使った作品が独創的な世界をつくり出している。5月30日まで。
知人からもらった折り紙のバラがきれいで、着想を得た。昨年12月ごろから約半年かけ、同級生や知人の協力を得て大量にバラを制作した。
会場では、着物をたたむときに使う敷き紙に赤や藍、黄色のバラがびっしり敷き詰められ、海岸に漂着したという筒状の樹皮には淡いバラを差し、華やかな雰囲気が漂う。壁には紙ひもを木のつるに見立て、緑や銀色の小さなバラを取り付けている。
つたにさんは廃材や漂着物を創作活動に生かす。眼鏡工場で使われていたひし形の研磨剤に色を付け花びらに見せた作品や、廃材タイルやピアノの鍵盤を用いたオブジェも並ぶ。
無機質な世界の中に鮮やかな色彩の花が咲き誇っており、アンバランスながらも調和の取れた世界観が見る人を引きつける。つたにさんは「コロナ禍でも花を見て癒やされてほしい。自由な感性で楽しんでくれれば」と話している。