聖火皿に火をともし、会場に手を振る松本薫さん=金沢城公園三の丸広場

聖火皿に火をともし、会場に手を振る松本薫さん=金沢城公園三の丸広場

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石川に聖火、104人トーチキス 金沢城公園

北國新聞(2021年6月1日)

 石川県内の東京五輪聖火リレーの代替イベントとなる聖火点火セレモニーは31日、2日間の日程で始まった。初日は金沢市の金沢城公園三の丸広場で無観客で開催され、104人のランナーが福井県から引き継いだ聖火を「トーチキス」形式でつないだ。ステージ上で一人ずつ聖火の熱さを感じ取った参加者は、それぞれの思いを込めて次の人へ炎を託した。

 参加者は晴れやかな表情で次々と登壇し、トーチの先端を近づけ合った。聖火が相手に移ると、それぞれ手を振ったり、ポーズを決めたりして喜びを表現した。

 第1走者を務めた加賀市東和中2年の濱森勇成さん(14)は「石川県で最初というプレッシャーがあったが、しっかり渡せた」と安堵(あんど)した様子で話した。

 聖火は加賀、小松、能美、川北、白山、野々市、内灘、かほく、津幡、金沢の各市町の参加者が順につなぎ最後は金沢市出身でロンドン五輪柔道女子金メダリストの松本薫さんが点火皿にともした。

 谷本正憲知事はあいさつで、新型コロナウイルス対応のため公道リレーを取りやめたことに理解を求めた上で「聖火をつないだ皆さんの思いが通じて、五輪の開催につながることを期待する」と述べた。

 最終日の1日は、七尾市の和倉温泉湯っ足りパークで行われる。聖火はその後、富山県に移る。

  〈コロナに翻弄無念の辞退〉
  〈元ボッチャ王者・穴水の嶋谷さん〉

 聖火リレーのランナーに選ばれていたパラリンピック正式種目ボッチャで日本一になったことがある嶋谷(しまや)長治さん(72)=穴水町鹿波、写真=は、入所する障害者支援施設で感染者が出たため、1日に七尾市で行われる「トーチキス」への参加を辞退した。嶋谷さんは「支えてくれる妻や家族に感謝を伝える機会にしたかった」と無念さを隠せなかった。

 嶋谷さんは中学卒業後に大工になった。57歳の時、屋根から落下して首の骨を折り、右手を除いて、ほぼ動かない体に。10年ほど前、現在の入所施設でボッチャに出合った。わずかに動く右手を使って、オープン座位クラスでは日本選手権をはじめ、北信越、県大会で14度の優勝を果たした。

 「送迎はいつも妻。少しずつ前向きになれたのも妻のおかげで、今では不自由な体に感謝することさえある」。妻や娘、孫と一緒に聖火を持って走り感謝の気持ちを示そうと聖火ランナーを志望した。

 1年延期となった聖火リレーは公道を走れなくなった。5月に入り、入所施設で感染者が出て、またしてもコロナに翻弄(ほんろう)された。嶋谷さんは「ランナーに選ばれただけでもありがたい」と気丈に語った。

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