金属産業のまちで知られる新潟県の燕市内で製造され、グローバルに展開する製品を集めた企画展「世界に翔(は)ばたく燕展」が市産業史料館で開かれている。明治時代に輸出産品として脚光を浴びた鎚起(ついき)銅器から、冬の生活を守る除雪機まで約30種類の品を紹介。技術革新を重ねて発展してきた地場産業の歩みを伝えている。
東京五輪の開幕を控え海外の注目が日本に集まる中、「燕から世界に進出した製品の歴史と価値も再発見してほしい」と企画した。
金属産業は江戸時代、水害に苦しむ農家が副業で始めた和くぎ作りが源流だ。最も古い展示品は鎚起銅器の老舗「玉川堂」の明治期の作品で、鳥や花の装飾が施された香炉。同型の品は1873年のウィーン万博など国際博覧会で人気を博し、燕が世界に知られるきっかけになったという。
展示室の中央に置かれ、存在感を放つのが、フジイコーポレーションが製造した除雪機。性能の良さから各国の南極観測基地やフィンランド・サンタクロース村で活用され、国際的な知名度がある。
このほか、1991年からノーベル賞の晩さん会で採用されている山崎金属工業の金属洋食器「ノーベルカトラリー」や、国内外の自動車製造ラインで工具や機械をつり下げて使われ、現場を支える遠藤工業の荷役機器「スプリングバランサー」といった品々も並ぶ。
会場には製品開発の経緯やエピソードを記したパネルも掲示。同館主任学芸員の齋藤優介さん(43)は「100年以上の歴史を刻む製造業が地域にこれだけ多くあるのは誇るべきこと。高い技術力や洗練されたデザインをじっくり眺めてほしい」と話した。
7月18日まで。月曜休館。