古代に福井県内で生産された須恵器や、東北や北陸の日本海沿いに流通していた越前焼を並べた特別展「ECHIZEN BRAND-海をわたる褐色のやきもの-」が6月26日、福井県越前町の福井県陶芸館で始まった。6世紀半ば~16世紀の越前焼など61品目が並ぶ。前期は8月29日までで、9月から11月まで後期が開催される。
同館の開館50周年を記念した特別展。前期と後期に分け、古代から現代までの越前焼の変遷をたどる。
1階展示では焼き物を古代、中世前期、中世後期に分け、作風や流通場所の変化を説明。骨つぼとして使われることが多かった中世前期の越前焼は、愛知県の常滑焼と同じような形で作られていたことが分かる。中世後期になると、常滑焼から脱却し、つぼ全体が丸みを帯びてくるなど越前焼独自の特徴が現れる。北海道から石川県まで、日本海側への流通が始まるのもこの時代。越前焼が一つの「ブランド」として確立し、各地で需要が高まっていたことがうかがえる。
2階では、北海道、新潟県、秋田県などから出土した、日本海を渡った越前焼などを展示。一乗谷朝倉氏遺跡の出土品もある。「名品編」で紹介されている越前焼唯一の重要文化財「古越前広口壺(こえちぜんひろくちつぼ)」は、福井県での展示が10年ぶり。広口壺には制作年と思われる「嘉元4年(1306年)」などの情報が刻まれており、同時代の越前焼の形の基準となっている。
初日に訪れた福井市の30代男性は「時代別に並べてあると変化が見えて面白い」と興味深そうに眺めていた。
7月24日、8月28日は午前11時から、同館学芸員によるギャラリートークが行われる。