鉄骨建築・溶接工事の光進工業(富山市中大久保・大沢野、杉田綱良社長)は8月、溶接の体験ができる施設「アイアンプラネット ベースオブ富山」を社屋横にオープンする。溶接業界で人手不足が深刻化する中、ものづくりの魅力に触れてもらうことで、会社の知名度の向上や人材確保につなげる。
アイアンプラネットは同業の長田(おさだ)工業所(福井県)が2012年に始めた取り組み。19年からフランチャイズ展開を始め、現在は4カ所がある。地元の事業者が運営を担い、溶接や金属加工のワークショップを行っている。遊んで学べる溶接のテーマパークを目指し、「鉄の惑星」を意味する名前にしたという。
ベースオブ富山の開業予定は8月28日。光進工業の旧事務所を改装したもので、広さは約24平方メートル。杉田社長らが講師を務める。小型の溶接機やプラズマ切断機を使い、椅子やネームプレートを作ることができる。
この取り組みの背景には、業界の人手不足がある。長田工業所は職人の高齢化を受け、一般向けに溶接の楽しさを発信しようと体験事業を始めた。次第に知名度が上がって採用への応募が増え、社員が約10人増えたという。
人手不足は県内でも課題となっている。県溶接協会の会員数は1998年度には215社だったが、2020年度には133社まで減少。光進工業の従業員数は7人で、うち4人がベトナムからの技能実習生。長く勤めてくれる人材を探して求人を出しているが、応募はほぼないという。
杉田社長は人手確保の方法を模索していたところ、インターネットでアイアンプラネットを知り、自社でも取り組むことを決めた。「まずはいろんな人に興味を持ってもらえるとうれしい」と話している。
ベースオブ富山は完全予約制で、対象は小学3年生以上。料金は材料費込みで2200~5500円。営業時間は午後2~4時、日曜日と祝日は定休。インスタグラムで情報を発信している。
■広がる体験型施設
県内の企業で、ものづくりの体験ができる施設を整備し、認知度の向上や販売促進などを図る動きが広がっている。
ますずし製造の源(富山市南央町、源和之社長)は2014年に「ますのすしミュージアム」を改装し、ますずし作りの体験コーナーを設けた。鋳物メーカーの能作(高岡市オフィスパーク、能作克治社長)も新社屋を建設した17年以降、鋳物の体験を行っている。
両社は新型コロナウイルスの影響で体験事業を一時中止していたが、現在は再開している。