福井県福井市鷹巣地区の山間の耕作放棄地で、牧場と農家民宿を経営する男性がヒツジの放牧を始めた。県畜産課によると県内でヒツジの畜産は例がないという。耕作放棄地の雑草対策に役立てる一方、食肉にして料理を提供するなど産業・観光振興を目指す。
放牧を始めたのは同市西畑町の男性。30年ほど前に千葉県からUターンし、保育施設の仕事をしながら、農業にも従事してきた。2017年からは農家民宿を始めた。
3年前、獣害問題の解消と地域活性化に役立てようとヤギの放牧を始めた。昨年には「たかすオハナ牧場」を設立した。
ヤギが雑草を食べることで草の背丈が低くなり、イノシシなどを見つけやすくなった。またヤギを見に来る人や、男性の農家民宿を利用する人が少しずつ増えた。
ただヤギは食用として需要が少ないことから、地区の産業振興や若者の定住促進を目指して新たな方策を模索。県畜産試験場の紹介を受け、耕作放棄地でのヒツジの飼育に詳しい石川県立大教授から助言をもらう中で、ヒツジの放牧を決めた。
7月6日、岐阜県中津川市から生後数カ月の5頭が牧場に運ばれた。食用に適したサフォーク種でオス2頭、メス3頭。作業には、同市沿岸部の事業者らでつくる「越前海岸盛り上げ隊」メンバーが協力した。
ヒツジは食肉として人気があり、牧場に農家レストランを併設することで、観光客をさらに呼び込めると見込んでいる。肉質を上げるため、雑草以外の飼料として、地元から無料提供してもらうくず米や米ぬか、おからなどを与える。オスのうち1頭は来年2月に市内のフレンチレストランに食肉としての出荷を予定しており、残りの4頭で交配繁殖させ頭数を増やす。
男性は「ヒツジは愛くるしいので、ぜひ見に来てもらえたらうれしい」と話している。