寄贈された米田家の母屋=富山市東岩瀬町

寄贈された米田家の母屋=富山市東岩瀬町

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北前船主の豪商「米田家」公開へ 富山市に土地・家屋寄贈

北日本新聞(2021年7月21日)

 富山市東岩瀬町の北前船主「米田家」の土地と家屋が、富山市に寄贈された。富山港の造成にも深く関わった豪商の母屋で、市は公開に向けて準備を進めている。昭和の初めごろまで、北前船交易によって日本海側で指折りの港町として繁栄した岩瀬地区。近年は、有志による古民家の再生が取り組まれており、その魅力発信に新たな歴史遺産が加わることとなる。

 岩瀬地区の北前船主の家屋では既に、国の重要文化財に指定されている「森家」や、登録有形文化財に選ばれた「馬場家」が市に寄贈されている。

 かつて栄えた岩瀬地区は、現在は空き家が目立つようになったため、近年は住民有志がまちづくり会社を設立し、伝統的な町並みを生かしながら、古民家や土蔵を再生。2020年に路面電車の「南北接続」が実現し、岩瀬地区と市中心部のアクセスが向上したことで、地ビール醸造所もオープンした。

 米田家は、05年ごろから空き家の状態で、現当主が「史料として残してほしい」と市に贈ることにした。20日に、市に所有権が移転した。

 敷地は約1500平方メートルで、母屋は木造2階建て延べ約950平方メートル。明治初めに建てられたとされ、くぐり戸がある玄関や奥行きの深い構造など町屋の特徴が残っている。空き家だった約15年間は親族が管理しており、大きな修繕は予定していないという。

 北前船を用いて江戸末期から始めた肥料の売買に関する記録など、母屋に保管されていた多くの史料も寄贈された。米田家の歴史を研究している犬島肇さん(80)=同市西宮町=は、「北前船から大地主に成長した過程をひもとく鍵になる」と語る。

 市は、本格的に史料の調査を始める。母屋の公開に向けては、有識者や地域住民を交えた協議会を来年度以降に開き、耐震性の確保やどのような史料を公開するのか検討する。

 新本晃久市生涯学習課文化財係長は「米田家について市民に広く知ってもらいつつ、岩瀬地区の地域振興にも役立てていきたい」と話した。

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