加賀市がにぎわい拠点整備のためJR西に対して譲渡を申し入れた大聖寺駅=同市内

加賀市がにぎわい拠点整備のためJR西に対して譲渡を申し入れた大聖寺駅=同市内

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大聖寺駅「譲って」 無人化計画のJR西に加賀市 「有人」維持へ カフェ、自習室で活気

北國新聞(2021年7月21日)

 加賀市は20日までに、無人化が計画されている北陸線大聖寺駅の駅舎の譲渡をJR西日本に申し入れた。カフェや自習室などを備えた拠点に改修する。1897(明治30)年開業の同駅は長く住民や高校生の通勤・通学で親しまれている。無人となれば地域の活力低下が懸念されることから、市独自で「有人化」し、駅前のにぎわいを取り戻す方針だ。

 市は事業費1億7千万円を今年度第2次7月補正予算案に計上し、30日の市議会臨時会に提出する。現駅舎は1953(昭和28)年に整備されており、初の大規模改修となる。

 計画では、待合室を現行の90平方メートルから180平方メートルに拡充し、新たにカフェを設けて飲食物を提供する。高校生らの自習スペースも設ける。テレワークに使え、職場を共有する「コワーキングスペース」110平方メートルも新設する。和式トイレを撤去し、おむつ交換などができる洋式の多目的トイレを整備する。

 今年度中にJR西から取得し、プロポーザルで整備・運営事業者を公募して秋ごろに設計に着手、来年4月の供用開始を目指す。

 市によると、大聖寺駅の乗降客は1日当たり約1800人で、駅周辺での滞留時間を長くし、地元商店への波及効果も見込む。

 JR西日本金沢支社の担当者は「譲渡する方向で市と協議をしている」と述べた。金沢支社管内ではこれまで、北陸線丸岡駅を坂井市に譲渡した例などがある。
  〈県内12駅を無人化〉

 JR西は2030年度までに大聖寺駅を含め石川県内の12駅を無人化する計画を示している。今年3月には七尾線の高松駅(かほく市)、4月には同線の良川、能登部(以上中能登町)、本津幡、北陸線の野々市、加賀笠間(白山市)の計6駅を既に無人化した。

 大聖寺駅の無人化時期は未定だが、加賀市は駅に人がいなくなれば、待合室の管理などが難しくなり、駅が通勤通学で立ち寄るだけの場所になると懸念。市独自に駅舎を取得して活性化の方策を取ることにした。

 市によると、2024年春の北陸新幹線敦賀開業に伴うIRいしかわ鉄道への移管後も、駅舎は市の所有となる見通し。

 宮元陸市長は、特急停車駅でありながら無人化されれば、駅本来のにぎわいが失われると指摘し「高校生をはじめとした利用者だけでなく、地域住民やテレワーカーが気軽に集える施設にしたい」と強調した。

  〈駅活用の先進例に 髙山純一金大名誉教授(交通工学)〉

 交通工学が専門の髙山純一金大名誉教授は「駅を拠点とした地域活性化に行政が取り組む先進的な事例になりうる」と評価した。

 通勤、通学で利用する地元客の利便性向上だけでなく、観光客受け入れにも資すると指摘。「歴史都市に認定された城下町大聖寺に人を呼び込み、『加賀は温泉だけではない』とアピールできる」と期待を寄せた。

 鉄道愛好者でつくる「北国(きたぐに)鉄道管理局」の岩谷淳平代表理事(45)=小松市=は、駅舎活用は地域一体で考えるべきだとし、「行政が管理することで住民が利用しやすくなり、地域の人が集まるコミュニティーになる」とした。

 ★大聖寺駅 1897(明治30)年、関西方面から延伸されてきた北陸線の福井―小松駅間の開通に伴って開業。今は廃線となった北陸鉄道加南線で山中温泉と結ばれ、観光客を温泉街に運ぶ接続駅だった。2024年春の北陸新幹線敦賀開業に合わせて路線の運営はIRいしかわ鉄道に移管される。

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