〈食育、観光に活用へ〉
能登で受け継がれている発酵食を後世に残そうと、能登半島広域観光協会(輪島市)は、若い世代や外国人向けの動画の制作に着手する。魚醤(ぎょしょう)「いしり」や米(こめ)飴(あめ)、かぶらずしなど多様な発酵食と地元の伝統文化との関わりをストーリー仕立てで伝える。9月に有識者や生産者らによる文化研究会を立ち上げ、発酵食の歴史や種類、観光への生かし方などを模索する。
「能登における発酵食文化の発掘・発信事業」として、文化庁の「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業に採択された。
同協会によると、三方を海に囲まれた能登地区は、発酵に欠かせない米と塩が手に入りやすく、高温多湿な夏に食物を腐敗させず、冬を越えるための保存食を加工する技術が磨かれたという。
動画では発酵食そのものだけでなく、田の神をもてなす農耕儀礼「あえのこと」でかぶらずしが出されることや、祭礼時に自宅に客を招く「ヨバレ」ではサザエのこうじ漬けをはじめ多彩な発酵食や地酒がふるまわれることなど、能登の民俗文化との結びつきを紹介する。生産現場の様子も収録し、SNS(会員制交流サイト)を使って広く発信する。
後継者育成へ地元の高校生らを対象にした食育プログラムや、都市部の住民向けに、いしりの料理教室や酒造見学などのオンライン講座も開く。同協会事務局の担当者は「発酵食をただ引き継ぐのではなく、現代にどう活用していくかを考えていきたい」と話した。