金沢市の近江町市場の鮮魚店が「金曜市」に力を入れている。観光客が少なく、金沢の「金」にちなんだ毎週金曜日に特売品をそろえて、地元客に足を運んでもらうのが狙いだ。コロナ下で迎えた開設300年の今年、「市民の台所」の原点に立ち返ってサービス強化に努めている。
先月30日、市場内の大口水産の売り場に「金曜市 大特売」の赤いのぼりが並んだ。目を止めた買い物客が足を止め、「どれでも一袋300円」の札が付いた魚を物色する。
この日、店頭に並んだ特売品はアマダイ、サバ、イワシ、タラなど。コゾクラは1袋にたっぷり7尾入りだ。「イワシちょうだい」。慣れた様子で1袋を買い求めた市内の男性(78)は「最近は人が少ないから買い物はしやすい。金曜はお得感があるね」と笑った。
「観光客が減ってつらいご時世でも、地元客にはしっかりサービスせんなん」
大口水産の荒木優専務が金曜市の狙いを説明する。もともと近江町の鮮魚店は、卸売市場の休市日に合わせて日曜休みが多く、地元客は前日の土曜に訪れる人が最も多かった。
2015年の北陸新幹線開業以降は観光客が増えて土日の混雑が激しくなった。金曜市は、コロナ下の人出の分散を図ろうと昨夏に試行したところ好評で、今年は鮮魚店5店がのぼりやステッカーを掲げて特売を行うことにした。
東京などで緊急事態が続くが、7月下旬の4連休では市場内の飲食店に行列ができるなど、休日は今後も混雑が予想される。荒木専務は「参加店が増え、『金曜は近江町へ』の流れができるといい」と話した。
〈毎月第3金曜日 駐車1時間無料〉
近江町市場商店街振興組合は開設300年の今年度、毎月第3金曜を「市民感謝デー」として駐車場3カ所の料金を1時間無料としている。