幾何学文様を線刻したカービングの作品などが並ぶ八田豊さんの企画展=福井県越前市武生公会堂記念館

幾何学文様を線刻したカービングの作品などが並ぶ八田豊さんの企画展=福井県越前市武生公会堂記念館

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視覚超えた作品触れて 現代美術作家、八田豊さん企画展 越前市武生公会堂記念館

福井新聞(2021年9月1日)

 福井県越前市の現代美術作家、八田豊さんの創作の歩みをたどる企画展「視覚を超えて」(福井新聞社後援)が越前市武生公会堂記念館で開かれている。視力を失うという困難を抱えながらも芸術と向き合い続け、聴覚や触覚を研ぎ澄ませて生み出してきた作品が堪能できる。

 八田さんは、県内で中学の美術教師を務めながら1950年代に作家活動を開始。パルプボードやアルミ板に幾何学文様を線刻する「カービング」で全国的な評価を得た。その代表作「ゴールデン・キララ」をはじめ、現在までの変化に富む画業を通じて制作された42点を展示した。

 カービングの制作過程で酷使した目は徐々に視力が落ち、完全に視力を失った後の90年代に手掛けた作品が「流れより」シリーズ。絵の具がキャンバスをしたたる音に耳を澄ませて制作した平面作品が並ぶ。

 次に挑んだのが、和紙原料のコウゾの樹皮を指先で確かめながら画面に貼り付けたシリーズ「流れ」。触感を頼りにまた新たな境地を切り開いた作品群は、八田さんの揺るがぬ創作意欲を感じさせる。

 会場には「流れ」の作品を触れて確かめられるコーナーを設置。八田さんは「目で見ないと確認できないわけじゃない。僕が見えないように目をふさいで触ってみてほしい」と「新しい絵の見方」を提案している。

 9月12日まで。月曜休館。一般500円。高校生以下、障害者とその介助者1人は無料。

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