来場者にあえのことを説明する中さん(手前右)=能登町柳田植物公園の合鹿庵

来場者にあえのことを説明する中さん(手前右)=能登町柳田植物公園の合鹿庵

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見学緩和、観光客戻る 奥能登であえのこと 田の神様もてなし

北國新聞(2021年12月6日)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産である奥能登の農耕儀礼「あえのこと」は5日、各地で営まれた。伝承する地域の中には、新型コロナ感染が落ち着いていることから、見学者の制限を緩和するところもみられ、古くからの作法を一目見ようと観光客らが戻ってきた。

 〈輪島〉
 あえのことは、農家が12月に田の神様を自宅に招き、翌年2月に送り出す。

 輪島市三井町小泉の茅葺庵档(かやぶきあんあて)の館では、地元公民館の「田の神様まつり」が営まれた。

 小山栄館長(71)が蓑(みの)を着た付き人と田へ向かい、目が見えないと伝わる夫婦神を招き入れた。小山館長は「この先少し段差がありますのでお気を付けください」と、丁寧に案内し、里山で採れた野菜や海の幸でもてなした。

 昨年はコロナ禍で同まつり実行委員ら関係者のみだったが、今年は実行委員や関西大の学生、観光客ら約40人が見守った。

 同市白米(しろよね)町では、県職員の川口喜仙(よしのり)さん(57)が紋付きはかま姿で自宅近くの棚田へ向かった。一年の実りに感謝し、田に塩や生米、酒をまいて清めた後にくわを入れ、夫婦神を自宅に迎え入れた。タイやおはぎ、干し柿など11品のごちそうでもてなした。

 〈穴水〉
 穴水町で唯一、あえのことを受け継ぐ森川祐征さん(82)=藤巻=方では、自宅前の水田から神様を迎えた。

 森川さんは田の神様を気遣いながら囲炉裏で暖を取ってもらったり、風呂に案内したりした。新米やかぶらずしなどを並べた御膳や、畑で収穫した大根、白菜などの野菜を丁寧に説明して杯に酒をつぎ、「神様のおかげで、どうにか豊作でございました」と感謝を伝えた。昨年は新型コロナの影響で見学客の受け入れを断ったが、今年は千葉や滋賀など県内外から観光客が訪れた。

 〈能登町〉
 能登町柳田植物公園の古民家「合鹿庵(ごうろくあん)」では、町あえのこと保存会の中正道さん(70)=上町(かんまち)=が田の神様をもてなした。新型コロナの感染が落ち着いたことなどから、今年は県内外から昨年の2・5倍となる約60人が見学に訪れ、中さんがあえのことの由来や料理のいわれを解説した。

 集落共同で儀礼を営む国重(くにしげ)の吉村安弘さん(78)宅、時長の山口集会所、神野(かんの)公民館では住民が集まって田の神様を迎えた。

 〈珠洲〉
 珠洲市若山町火宮の田中茂好さん(69)方では、田中さんが例年通り裃(かみしも)姿で田の神様をもてなし、今年の収穫への感謝を伝えた。

 昨年に続き、コロナ対策で見学者は受け入れず、家族のみで行った。座敷には小豆飯や豆腐のすまし汁などの料理を並べ、目が見えないと伝わる夫婦の神様を席まで案内した。

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