カメラを前に、解説しながら絵付けする福島さん(右)=能美市佐野町

カメラを前に、解説しながら絵付けする福島さん(右)=能美市佐野町

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九谷焼の技を映像に 絵付けや成形工程、解説添え【石川県】

北國新聞(2022年2月3日)

  ●県陶磁器組合連教材に活用
 県九谷焼陶磁器商工業協同組合連合会(能美市)は2日までに、九谷焼の技術や画風を伝える映像資料の制作に乗りだした。県内で長年活動する作家や職人の協力を得て、絵付けや成形の工程を撮影し、解説も添える。作家や職人を目指す人の教材として活用し、課題となっている担い手確保につなげる。

 撮影は昨年11月から始まり、毎年度10人程度、計50人を目標に進める。伝統的な古九谷や吉田屋風、花詰(はなづめ)といった絵付けのほか、成形の技を収録する。撮影は長時間に及ぶこともあるが、手仕事の一連の流れを見せて実際に作れるよう、編集はせず、作家や技法ごとに1本の映像に仕立てる。

 赤絵細描(あかえさいびょう)で知られる福島武山さん(77)=能美市佐野町=の工房では、4日間にわたり計10時間の撮影が行われた。カメラを前に福島さんは、絵の具を準備する過程から丁寧に説明。素地の皿に緻密な文様を描き、「同じ太さ、濃さの線になるよう、同じリズムで筆を動かして」などと語りかけた。

 技法を収録する取り組みについて、福島さんは「筆の運びや絵の具の扱い方など、映像だと繰り返し見られる。九谷焼の道に進みたい人の参考になればうれしい」と期待する。

 連合会によると、組合員約250人のうち、成形や絵付けに携わる作り手は150人程度といい、鏑木基由理事長(65)は「大正から昭和にかけての全盛期に比べ3分の1に減った」と危機感を抱く。

 撮影を担当する森幸太郎会計理事(71)は「10年、20年後を見据えて、手本となるよう今のうちにきちんと記録し、残しておきたい」と力を込める。

 映像は、県九谷焼技術研修所(能美市)の研修生をはじめ、今後、担い手となる人たちに使ってもらう。鏑木理事長は「これからも新しいデザインや技法は生まれるだろうが、江戸時代から歴史のある九谷の礎は保存しなければならない。九谷の世界に入りたいと門をたたく人に見てほしい」と語った。

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