白山市鶴来本町で昨年12月に開店した「洋菓子Haku(ハク)」のパティシエが、鶴来の醸造品を使った新メニューの開発を始めた。麹(こうじ)、酒、みそ、しょうゆ、酢といった「醸(かも)す文化」が根付く鶴来で、独自の洋菓子を作る。第1弾は、地元で造られる梅酒を使ったティラミスで、「鶴来のいいところを知ってほしい」と意気込んでいる。
鶴来街道沿いの町並みと周囲の自然にほれ込み、金沢市出身のパティシエ徳田英晃さん(35)は昨年12月、空き店舗で念願だった独立開業を果たした。通り沿いでの開店を喜ぶ住民とのふれあいを通じ、鶴来の人情と温かさに触れてきた。
ショートケーキやプリン、チーズケーキなどの奇をてらわない素朴な品ぞろえが人気となり、完売することもしばしばあるという。そんな中、鶴来の至る所にある醸造品を材料に使った洋菓子を作ろうと思い立った。
最初の品には、自らの好物だという小堀酒造店の加賀梅酒を使うことにした。試行錯誤の末、新メニュー「加賀梅酒のティラミス」を仕上げた。梅酒を浸したスポンジに、イタリアのクリームチーズ「マスカルポーネ」を合わせた。梅酒の風味を前面に押し出しながら、大人の味わいと軽い口当たりにこだわった。
徳田さんは、洋菓子店の近所にある小堀酒造店の小堀靖幸社長(41)に、知人を介して加賀梅酒を使う菓子作りを持ち掛けた。県外での勤務を経て昨年4月に社長に就いた小堀さんは、「鶴来に帰ってきて、魅力を再発見することが多い。鶴来の酒が新たな品と共演できるのはうれしい」と語り、徳田さんの申し出を受けた。
ティラミスは5日から、店の定番メニューとして取り扱いを始める。今後も日本酒を使ったチョコレートのほか、みそやしょうゆを使ったケーキを作りたいと構想を練っている徳田さんは「鶴来には良い醸造品がいっぱいある。お菓子で鶴来の食文化を伝えたい」と意気込んだ。