昭和初期のパンフレットの原画となった鳥瞰図

昭和初期のパンフレットの原画となった鳥瞰図

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昭和5年鳥瞰図、街並み色彩豊か 金沢商工会議所に現存

北國新聞(2022年3月4日)

 1930(昭和5)年発行のパンフレットに掲載された、金沢の鳥瞰図(ちょうかんず)の原画が3日までに、金沢商工会議所で見つかった。「昭和不況」の克服へ観光振興が盛り上がっていた時期に描かれた1枚で、旧制四高などがあった当時の街並みが色彩豊かに描かれている。会議所関係者は「捨てられなくて良かった。しっかり保存したい」と価値を見詰め直している。

 鳥瞰図は縦45センチ、横1・8メートル。金沢城を中心に、金沢駅や兼六園、「北陸の宝塚」と称された「粟ケ崎遊園」などが施設名とともに描き込まれている。

 奥には白山、立山に加え実際は肉眼では見えないはずの富士山の姿もある。建て替えのため2012年に閉館した会館に飾られ、その後は倉庫に眠っていた。

 左端には「昭和五年」「外二郎」の文字が添えられている。近現代史を専門とする金沢星稜大の本康宏史教授によると、1930年に金沢商工会議所などが発行した「金沢御案内」の原画で間違いないという。「外二郎」は作者の吉田外二郎を指すとみられる。

 当時は旅行・観光ブームとともに全国的に鳥瞰図が流行した。大家として名をはせたのは吉田初三郎で、外二郎はその亜流として活躍した人物という。金沢市内にあった印刷会社「明治印刷」の図案師だったとの記録もあり、富山や滑川の鳥瞰図を残している。

  ●観光振興で製作

 本康教授によると、金沢では27年の金融恐慌や29年の世界恐慌による不況を背景に、観光振興の動きが活発化した。32年には「産業と観光の大博覧会」が催され、この時は広報の一環で初三郎が金沢を描いている。

 本康教授は「会議所の鳥瞰図も一連の観光振興施策で製作されたものだろう。大変貴重だ」と評価した。

 鳥瞰図は現在、金沢商工会議所会館の専務理事室に飾られている。普赤清幸専務理事は、保存状態が良いことを喜び「いろいろな場所や建物が描かれていて、見ていて飽きない。大切に受け継いでいきたい」と話した。

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