福井県おおい町出身の直木賞作家、水上勉さん(1919~2004年)の絵画コレクション24点を紹介する特別展「作家の選美眼と選ばれた絵画」が、同町岡田の若州一滴文庫で開かれている。水上さんによる講評、画家への思いをつづった文章が添えられ、表現者同士の心の交流やなぜこの画家、絵を選んだかが伝わってくる。6月27日まで。
水上さんと親交があった7人の画家の絵画などを展示している。
故須田剋太(こくた)さんは、故司馬遼太郎さんの「街道をゆく」の挿絵を手掛けた画家。ごつごつとした大岩と荒波という越前海岸を描いた2作品の裏面には、武骨な文字で「水上勉氏におくる」と書かれている。水上さんの文章では、須田さんを「旅の途上にある詩人」と評して人柄を愛し、「心をとらえられて、じっと己が思いをあずけている」と作品に心酔。互いに敬意を持っていたことが分かる。
同町の画家、故渡辺淳(すなお)さんの作品は、厚めの竹紙の裏表に絵が描かれている。夕焼けに黒く浮かび上がった木のシルエットの印象が強烈だ。水上さんは初めて渡辺さんの作品に接した時の気持ちをつづり、絵画に対する「この人の執念に脱帽する」と文章を寄せている。
「日本画の風雲児」などと呼ばれた故中村正義さんが描いたリトグラフ「舞妓」は、赤と緑のコントラストが鮮烈だ。「原爆の図」で知られる故丸木位里、俊夫妻、故秋野不矩さんらの作品は見応えがあり、水上さんの人物評、作品評も読み応えがある。
学芸員の下森弘之さん(43)は「水上さんの美術に対する心持ち、画家とのつながり、交流を感じ取ってほしい」と話している。
午前9時~午後5時開館で火曜休館。一般300円で高校生以下は無料。問い合わせは同施設=電話0770(77)2445。