福井県若狭町の三方湖で主に冬場に漁獲されるフナを1年中味わえるようにしようと、若狭高海洋科学科の女子生徒らが商品化を進めてきた缶詰「寒ぶなの煮付け(ふな醤油(しょうゆ)煮)」が完成し5月13日、三方湖畔で商品発表会が開かれた。試食会やアンケート結果などから誰でも食べやすい甘辛い味付けにし、パッケージは目立つ黄色を基調とした。三方五湖エリアの新たな名物として16日から販売を開始する。
フナは三方湖で400年以上続くとされる伝統漁法「たたき網漁」で水揚げされる。近年は担い手不足が懸念されることから、湖魚のおいしさを伝えることで需要を拡大し、漁師の数を増やすきっかけにしようと、県里山里海湖(うみ)研究所の樋口研究員が企画した。たたき網漁を担う鳥浜漁協の依頼もあり、同校のいずれも3年の女子生徒3人が立ち上がった。
福井缶詰(小浜市)の協力を得て、昨年6月に試作を開始。フナの煮付けは一般的な食べ方の一つで、地元住民は醤油が多めの味付けでよく食べるという。今回は8回に及ぶ試食会や、同校生徒、教員ら30人に行ったアンケートで甘い味付けが好まれたため、初めてフナを食べる人にも親しんでもらうように調理した。試作品数は43種類に上るという。
今年1月下旬に完成。今冬に三方湖で取れたフナ530匹を使い、約1300個を用意した。賞味期限は約3年。売り上げの一部は三方五湖の自然保護活動費に充てられるという。
同町鳥浜の町漁業体験施設で開かれた発表会には生徒や鳥浜漁協の田辺組合長、樋口研究員らが出席。生徒らが、成魚を使ったフナの缶詰は日本で唯一ということや、手作業で作るからこそ魚卵を入れられることなど説明した。
缶詰は観光客らの目に留まりやすいようふた部分を明るい色にし、「寒ぶな」の文字を全面に出した。リーダーの生徒は「放課後残って味付けで試行錯誤することもあった。日本一おいしい仕上がりです」と笑顔を見せた。
缶詰は1個170グラム入りで千円(税込み)。鳥浜漁協や県年縞(ねんこう)博物館内「カフェ縞(しま)」などで購入できる。