福井県あわら市内の里山や海岸を散歩ついでに、落ち葉や小枝、朽ち木、貝殻などを拾い集め、自然素材でアート作品を創作している男性がいる。定年後に始めた自然アート作品は250点近くに上り、うち約80点を12月9日まで同市の細呂木ふれあいセンターで「小枝あ~と展」として展示している。植物の種を頭にした人形や、貝殻を花びらに見立てた花など、どこにでもある自然の素材の風合いを生かし、アートとして新たな息吹を吹き込み、来場者の共感をよんでいる。
男性は、同市市姫1丁目の疋田長男さん(77)。創作を始めたのは2009年ごろ。散歩中に拾ったドングリの傘を、人の頭に見立てて人形を作ろうと思ったのがきっかけ。自然保護団体「あわらの自然を愛する会」のメンバーであり、植物の知識も豊富で、コツコツと散歩しながら小枝や種、貝殻を自宅に集めるようになった。
材料は、主に市内で調達。庭木の伐採材や山に落ちている小枝、波松海岸で拾った貝殻、野菜や果物の種など、ごみになるようなものも再利用。暮らしで目に入ったもので創作意欲がかき立てられると言い、「枝一つとっても、使い方次第でいろんなものを表現できる。価値がないような物も、見方を変えれば、アートに生まれ変わる」と疋田さん。
展示は寺院や銀行のほか、年一回は細呂木ふれあいセンターでまとめて展示、今回は新作を中心に出品。朽ち木で東尋坊の柱状節理を表現した作品をはじめ、大小さまざまな貝殻やトウモロコシ、ウリの種を使った花々など、素材の風合いや形を生かしアートに仕立てる。来場者は市外からも訪れ「癒やされる」「発想ひとつでアートになるのか」などの声が上がっている。
疋田さんは「子どもの頃は、竹でスキー板や水鉄砲も作るとか遊ぶものは自分で作った。だから、作品を作る時は童心に返る。どんな自然素材でできているのか、考えながら見てほしい」と話している。
同センターの展示時間は午前10時~午後4時。日月曜、祝日は休館。